Branding

老舗和菓子店から新しい和菓子体験を。

和菓子ブランド

享和3年(1803年)京都に創業した和菓子店、鶴屋吉信。創業200年を超える老舗は、若年層の和菓子離れ、新規顧客の獲得という課題に対し、和とモダンが融合した現代的な商品展開の新ブランド「IRODORI」を立ち上げました。
私たちはそのコンセプトメイキングからネーミング、VI設計、ビジュアル開発、商品開発、パッケージやショップツールのデザイン、さらには店舗やユニフォームのデザインまで手がけました。和菓子がこの先も日常的に愛されるように、伝統を重んじつつも進化していくブランディングを行っています。

  • CLIENT:Tsuruya Yoshinobu
  • Category:BRANDING/ART DIRECTION/LOGO/PACKAGE/GRAPHIC/WEB

RESEARCH

和菓子離れの若年層にもリーチする新ブランドを

味わいはさることながら、四季折々の風情まで美しく表現される伝統文化、和菓子。多くの日本人に愛されていますが、若年層にとってはなじみの薄い存在となりつつあります。10代~60代男女の菓子の嗜好性を調査すると、「和菓子・洋菓子どちらも同じくらい好き」という回答が全世代で半数以上ある一方、10代で週に数回和菓子を食べるのは約2割で、洋菓子の半分ほど。「かしこまった感じがする」「気軽に食べられない」といった和菓子への敬遠が浮き彫りになりました。
そうした若年層の顧客を開拓すべく、老舗和菓子店の鶴屋吉信は新プロジェクトを始動。1803年の創業以来脈々と受け継がれてきた伝統を進化させる、新たな和菓子ブランドの立ち上げに私たちは参画しました。

CORE VALUE

体験と視点を掛け合わせた「体験型和菓子」

伝統を重んじつつも進化していく鶴屋吉信。「進化する伝統」を手がかりにコンセプトメイキングを進める中で私たちが発見したのが、伝統的な和菓子にすでに存在するさまざまな体験価値でした。羊羹、もなか、生菓子、焼き菓子、涼菓などそれぞれに、ほかの洋菓子では味わえない独自の体験があります。そうした「体験」と「若年層に響く視点」を掛け合わせることで、和菓子がより日常的になり、その日常に少しだけ特別なひとときを提供できるのではと考え、「体験型和菓子」をブランドコンセプトに設定しました。

NAMING & LOGO DESIGN

和菓子を自由に選びたくなるIRODORI

新ブランドのネーミングは、鶴屋吉信のシンボルマークである「鶴」と「彩(いろどり)の豊かさ」を合わせた「鶴屋吉信 IRODORI」に。うつろいゆく自然や四季折々の変化一つひとつを楽しんでいただきたい、日常に少しだけ特別なひととき=「彩り」を提供したいという想いを込めています。
ロゴマークは、これまでの鶴屋吉信のマークを日本の伝統色で彩ることによりシックでモダンな印象を醸成し、「進化する伝統」を表現。朝日、夕日、晴天、晴朗、夜の帳、夜空の6色それぞれが時の流れを表し、ショッパーやパッケージなど随所に挿し色として使用しています。京都駅・八条口というロケーションの特性も考慮し、若年層はもちろん観光客・新幹線利用のビジネスユーザーの目にも留まりやすいVI設計を果たしました。

PRODUCT & PACKAGE DESIGN

マカロンのように楽しめる新感覚の最中

新商品開発にあたり私たちが着目したのが、鶴屋吉信で長く愛されている和菓子の一つ、最中でした。そこに「体験」と「若年層に響く視点」を掛け合わせ、鶴屋吉信 IRODORIを象徴する商品「IROMONAKA」が誕生しました。かわいい小瓶に詰められた3種のしっとりなめらかな餡。それを木べらで好きな量だけすくい、日本の伝統色で焼き上げた一口サイズの最中に挟んで食べる、まるでマカロンのような和菓子です。箱を開いた瞬間、餡や最中を選んでいる間、ギフトで受け取ったときの高揚感を意識したカラフルなパッケージに仕上げました。
ほかにも、一口サイズで楽しめる新しい羊羹や生菓子などの商品開発にも携わり、「少量ずついろんな味を楽しみたい」という昨今のニーズに応えています。

STORE COMMUNICATION

対面型から自由に選べるセルフサービス型へ

店舗は従来のような対面型の接客ではなく、セルフサービス型に。それによって、好きな和菓子を好きなだけ購入できる販売導線を確立しました。ユニフォームやグッズデザインも含め、店舗まるごとデザインしています。
ショップデザインはほかにも、鶴屋吉信の和菓子を楽しむカフェ「tubara cafe」や、鶴屋吉信 虎ノ門ヒルズ店を手がけました。虎ノ門ヒルズ店ではオフィスワーカーに向けてドリンクサブスクサービスを開始。エルメスやティファニーのビジュアルを手がけるMats Gustafson(マッツ・グスタフソン)さんに鶴のイラストを書き下ろしていただき、ショッパーや包装紙に展開しました。どの店舗も伝統と革新を体現したモダンなデザインを積極的に取り入れ、新たな顧客を獲得しています。
日本の四季折々の魅力を楽しめる和菓子は、無形文化遺産に登録された「和食」と同じように豊かな魅力にあふれています。そんな和菓子がこの先も日常的に愛されるように、伝統をアップデートし、さらなる成長を目指しています。

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