事業開発やブランディング、プロダクト開発など多彩な領域に取り組むDynamite Brothers Syndicate。そこには、デザイナーと肩を並べて走るプロデューサーやプロジェクトマネージャーの存在が欠かせません。今回はそんな”プロデューサー”に迫ります。
第一回目はPRの岡田が、プロデューサー植村に話を聞きました。
岡田:植村さん、本日はよろしくお願いします。まずは簡単に自己紹介をいただいてもいいですか?
植村:植村です。DBSでプロデューサー/プランナーをしています。
岡田:ありがとうございます!「プロデューサー」という肩書きですが、実際にはどんなことをしているのでしょう?
植村:クリエイティブやデザイン、言葉を通じて、企業やブランド、商品やサービスの価値を上げることが中心です。そして、クライアントに並走して、プロジェクトを着地させることかな。
岡田:そうですよね。”価値を上げる” はわたしも入社してから毎日聞くワードです。でも改めて聞くと、とても本質的で重要な役割ですね。デザインという手段を使いながらも、最終的にはビジネスの成果に責任を持つということですよね。最近はどんなプロジェクトに関わっているんですか?
植村:たとえば、オーダーキッチンブランド「MEISDEL」のブランディングをお手伝いしています。オーダーキッチンは1ユニット2,000万程度もしくはそれ以上するとても高価なサービスです。日本で一般的なシステムキッチンのように、既に存在している商品を選ぶのではなく、要望に応えるためにパーツからフルカスタムで制作します。ある意味無形商材とも言えるので、それだけに、ブランドへの信頼感、つまりブランディングが非常に重要になります。私の役割は、富裕層を相手にしたマーケットにおいて、「MEISDEL」のオリジナリティを明確にし、どのように信頼と共感を獲得するのか、その方針と戦略を構築することです。
岡田:オーダーキッチンってそんなに高価なんですね。確かに特別な体験ですね。富裕層マーケットでのブランディングって、一般的なBtoCとは全く違うアプローチが必要そうです。価格帯を考えると、もはや「住宅設備」というより「ラグジュアリーなインテリア」や「室内の内装建築」に近い位置づけですよね。そういった市場での信頼獲得って、どんな戦略を?
植村:最初に提案したのが、イタリア・ミラノで毎年開かれる世界最大の家具・インテリア国際見本市「ミラノサローネ」での出展でした。その中でもキッチン専門の「ユーロクッチーナ」への出展を提案しました。ユーロクッチーナへの出展を提案した背景には3つの理由がありました。
1.プロジェクトを具体的にできること。
2.ブランド価値を世界に向けて明確に定義する必要があること。
3.世界的な見本市に出展することで、マーケットに対してわかりやすいステータスと信頼感が醸成できること。
こうした狙いがありました。
岡田:ミラノサローネは聞いたことがあります。展示会への出展まで提案されるんですね!そこまで踏み込むのは少し意外でした。でも確かに、富裕層にとって「世界基準での評価」って重要な判断材料ですよね。マーケティング戦略から実行手段まで一気通貫で考えるんですね。たくさんの選択肢の中からベストな戦略を考えるのは大変そうですが、同時にすごくクリエイティブで面白い仕事ですね。
岡田:お仕事柄、常に情報を仕入れていらっしゃると思うんですが、日常的にチェックしているメディアはありますか?
植村:海外メディアや、海外を分析しているメディアですね。それと、自分の趣味嗜好とは違うテーマのポッドキャストをよく聞きます。
岡田:やはり海外のニュースを入れられるんですね。グローバルな視点でプロジェクトを見る必要があるからでしょうか。具体的にはどんなものですか?
植村:たとえば『Lobsterr Letter』。Takramの佐々木康裕さんと編集者の岡橋惇さんが運営しているニュースレターで、世界中のカルチャーやビジネス情報をキュレートして届けてくれます。
岡田:『Lobsterr Letter』は植村さんが教えてくださったので、購読しています。内容もですが、デザイン会社ならではの削ぎ落とされたデザインも素敵ですよね。情報の質も洗練されていて、読むこと自体が勉強になります。ポッドキャストはどんな番組を?
植村:色々聞いてますが、例えば『流通空論』『味な副音声』なんかを聞いてます。
岡田:全然想像ができませんが…ネーミングセンスが素敵ですね。どんな内容なんですか?
植村:『流通空論』は、ラッパーでクリエイティブディレクターのTaiTanによるPodcast。「流通」とはなにかを解きほぐしながら、ゲストたちと⾃由連想形式で「空論」を展開する、新感覚の「放⾔ビジネスプログラム」です。
『味な副音声』は、フード・エッセイスト平野紗希子がおくる、おいしいポッドキャスト番組。
ラッパーが様々なゲストを招いてマーケティングを語ったり、ビジュアルなしで美味しいフードを音と声だけでで紹介したり、僕の中ではスタンダードから外れているところが面白いんです。
岡田:面白そうです!聞いてみます。意図的に「自分の専門外」の情報を取りに行くことってとても大事ですよね。植村さんのお話を聞いて、異分野からの発想がクリエイティブワークには生きるんだと思いました!
岡田:情報をただ集めるだけじゃなくて、どう活かすかが大事ですよね。意識していることってありますか?
植村:すぐ使うこと。いいなと思った視点やフレーズは、プレゼンやミーティングの場ですぐに使うようにしています。
岡田:行動が早い!(笑)でもそれって本当に重要ですよね。せっかくいい情報に触れても、そのままにしておくと忘れてしまったり、活用のタイミングを逃したりしますもんね。実践しながら自分のものにしていく感じですか?例えば?
植村:先日の打ち合わせでVMDコンサルの方が、「見えないVMD」と言っていたんです。VMDは一般的にはお客様から見える部分を刺すと思うのですが、お客様から見えない部分の作業効率を上げる整理整頓をそう説明していました。別のミーティングで「見えないデザイン」みたいな使い方をすぐにしちゃいました。
岡田:それはいいフレーズ!応用力がすごいですね。「見えないデザイン」って、体験を支える重要な部分ですよね。クライアントとの会話でもこういうやりとりのなかで新しい気づきを提供できそうですね。
岡田:お仕事する上での「自分なりの流儀」ってありますか?
植村:愚痴を言わない。30歳くらいの時に読んだ松井秀喜の本に書いてあったのだけど、人の悪愚痴含めた愚痴を言っても自分にとって何もいいことないなと思ったんです。とても人格者のように聞こえそうですけど、そんなに深く考えてなくて、その方が楽だなと思って、今でも続けてます。
岡田:シンプルだけど大事ですね。たしかに植村さんが愚痴を言っているところは見たことがないですね。クライアントとの関係性を築く上でも、チーム内でのポジティブな雰囲気作りにも直結しますよね。愚痴を言わない分、エネルギーを建設的な方向に向けられるというか。松井秀喜さんというのが植村さんらしい…!(笑)一流のアスリートの考え方って、ビジネスにも通じるものがありますね。
岡田:「スピード」と「丁寧さ」はどう両立していますか?優先順位のつけ方や、時間の使い方に流儀があれば教えてください。
植村:言葉をシンプルに整理することかな。「野球を一生懸命がんばりたいです」と言ってた人が、「甲子園を本気で目指します」と言い始めたとします。その方がシンプルで言葉の強度も上がるし、発言に覚悟がいりますよね。そうすると、やるべきことの優先順位もシンプルに見えてくると思います。
後は、数をこなすことかな。数をこなせば物理的なスピードが上がるし、それだけ経験値も上がるのでとっても大事だと思います。
岡田:なるほど!言葉が整理されると、やるべきことが自然と見えてくるんですね。これってブランディングの本質でもありますよね。クライアントの「なんとなくこうしたい」を「明確にこれを実現したい」に言語化することで、戦略も戦術も一気にクリアになる。プロデューサーって、ある意味「言葉の翻訳者」でもあるんだなと感じました。そして経験の積み重ね。確かに、同じような課題に何度も向き合うことで、解決のパターンやアプローチの引き出しが増えていきそうですね。
岡田:では仕事とは少し離れて…最近いちばん笑ったことは?
植村:男子中学生が真剣に硬式野球に取り組んでいる中で時折見せる、くだらないノリ。
岡田:と言うと?
植村:40℃近い炎天下で、ダッシュを繰り返すトレーニング中に、キャプテンが突然何かを叫び出したんです。みんなそれに続いて叫びながらダッシュをし始めたんだけど、「壱の型 霹靂一閃!」といいながら走っていたんです。みんなもそれに続いてました。鬼滅の刃ですね。映画を観て善逸の雷の呼吸を真似て「壱の型 霹靂一閃!」と叫んでいたんです。キャプテンに続く子もいれば、特に真似することなくクールに走る子もいて、すごくいいなと思いました。そのチームは全国を本気で目指すクラブチームで、練習も厳しく、とてもストイックなんだけど、ユーモアを取り入れることでもうひと頑張りできたり、きつい練習が楽しくなったりして。
最近改めて読み直している千葉雅也の「勉強の哲学 来るべきバカのために」の中で、千葉氏は「勉強」とは、凝り固まったノリから自由になるための営みであり、その核心にあるのが「言葉の意味(使い方)をずらす・変える」ことである。そして、その際とても重要なのはユーモアを取り入れることだと説いています。(※私なりの解釈です)
深く追求し続けるだけではなかなか答えは出ないので、ユーモアを取り入れて視点をずらしながら学ぶこと。最近の僕のトレンドは常に意識的にユーモアを取りいれることです。
仕事以外と言われたのに、仕事の話になってしまいましたね。
岡田:そういう瞬間って癒やされますよね〜!千葉雅也さんの話も興味深いです。「言葉の意味をずらす」って、まさに先ほどの「見えないVMD」を「見えないデザイン」に転用した話とも繋がりますね。
岡田:最後に、デスクまわりに「自分っぽい」と思うものってありますか?
植村:仕事のデスクに「自分っぽい」ものはないですね。あまり、仕事の場に自分の趣味や嗜好を持ち込むタイプじゃないので。強いて言うなら、ジャンルがバラバラな本ですね。基本的に本は読む方だと思うのですが、その時に担当しているプロジェクトによって、デスク脇に積み上がる本が常に変わってきます。新しく買ったり、昔の本を引っ張り出してきたり。本を選ぶ基準は、少し視点をずらして新しい視点が見つかるかという点ですかね。整っているわけではないのでちょっと恥ずかしいですけど。
岡田:それこそが一番「植村さんらしい」気がします!デスクに並ぶ本を見れば、今取り組んでいるプロジェクトの性質や、どんな角度からアプローチしようとしているかが分かりそうです…!言いすぎました…(笑)その時々の植村さんの思考プロセスが可視化されているとも言えますね。

岡田:植村さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!
次回も別のプロデューサーや、プロジェクトマネージャーにお話を伺う予定ですので、どうぞお楽しみに!
PR 岡田 & PRODUCER 植村