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マーケティングだけでは救えない!クリエイティブでマッチ売りの少女を救え!!

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2024.5.9

「マッチ売りの少女」の物語はマーケティング戦略などのビジネス本やブログで、どうしたらマッチが売れたかを様々なメソッドを用いて解説されることが多い定番です。そんなテーマをあえて取り上げるのは、クリエイティブの視点で語られていることがほとんどないから。論理的思考力を用いたマーケティングは必要ですが、窮地に立たされている少女にとって重要なのは感情を動かすクリエイティブです。今回は、誰もが知るお馴染みの物語で、人の行動に影響を与えるクリエイティブを、具体的な事例を通して解説します。当社デザイナーが今回のために作成したマッチのオリジナルデザインもお楽しみいただけます。

1.物語のおさらい

アンデルセンの「マッチ売りの少女」は、寒さ厳しい大晦日の夜にマッチ売り の少女が街角でマッチを売る物語です。彼女は貧しく、凍える寒さの中でマッ チを売っています。しかし、誰も彼女のマッチを買ってくれず、次第に寒さに耐 えきれず、最後にはマッチをすべて燃やして暖をとろうとします。その火の中で 幻想的な夢が現れ、亡き祖母や暖かい食事、そして天国への 入り口としての門が現れ、少女は幸せな終わりを迎えます。 しかし、実際には彼女は凍え死にしてしまい、その冷たい 体が次の朝見つかります。

2.ビジネス書や、マーケティング系ブログ記事での考察例

例えば下記のような考察が散見されます。

・そもそも薄利多売のマッチ商材に問題がある
・売る場所が間違っていた
・ターゲットが不明瞭だった
・提供価値をもっと明確に伝えるべきだった
・差別化が弱かった
・マーケティングのフレームワーク4Pなどでの分析
などなど

身近なテーマに置き換えて課題を解決するのは常套手段なので、こういった考察も理解はできるのですが、筆者はふと疑問に思いました。「目の前の困っている少女を助けるのは、論理的思考ではなく感情のはずだ」と。少女に必要なのは論理的思考ではなく、感情を行動に変えるクリエイティブの視点が必要なはずです。

そこで少女を助けるために、改めて少女が置かれている状況を整理します。

状況
・雪が降る中、困っている可哀想な少女。
・おそらく100円程度で決して買えない金額じゃない
(→つまりマッチが必要かどうかは大きな問題じゃない)
・声を出してマッチを売っている少女は目に入っている
(→リーチはできている)

仮説
マッチが必要かどうかは問題ではなく、別の心理的ハードルが働いている可能性が高い。

課題
目の前に困っている少女がいるのに、なぜ手を差し伸べられないのか

【無視する背景】
・時代背景・マッチにニーズがあるかどうか・なぜマッチだったのか
などのそもそも論

3.目の前の少女に手を差し伸べるために必要な視点とは?

ポイント
・売っているのは幼い少女であること
・差別化とか、マッチが必要かどうかは問題じゃない
・金額の問題じゃない

必要なのは手を差し伸べるキッカケ。

つまり

人が行動を起こす局面に必要なのは、
直感的に感情を動かすクリエイティブな視点

4.クリエイティブが行動を変える事例

 

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たまたま通りかかった一人の女性がメッセージを書き換えると、人々は足を止めるようになり、お金が集まるようになりました。まさに直感的に感情を動かしたクリエイティブな事例といえると思います。人々は感情移入できると、感情が行動に変わるんですね。

 

 

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こちらはすっかり定着しているマタニティマークです。1999年にフリーライターの村松純子さんがはじめてつくり、各地域に拡がり現在に至ったようです。このマークのおかげて筆者も席を譲るなどの行動に起こしやすくなりました。注目したいのは村松さんのコメントです。

「基本的にほとんどの方は、やさしい気持ちを持っていらっしゃることと思います。ただ、 外見で判断できなかったり、キッカケがつかめなかったりして、やさしさが行動になかな か結びつかないのではないでしょうか? BABY in MEのマークが、そうした誰もが持っ ているやさしい部分を引き出す存在になれたら、本当に幸いです。(村松純子)

このコメントに筆者が伝いたいことが集約されていると思っています。誰もが持っている優しい気持ちを行動に変えること。その局面において力を発揮するのがクリエイティブだと思います。

 

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5.試しにデザインしてみました。

目的は少女に手を差し伸べることなので、本来それがマッチだろうと、花の種だろうとなんでもいいのです。とはいえ、我々はクリエイティブエージェンシーなので簡単なアイデアに落とし込みました。大事なのは、足を止めてもらうために、興味を引くきっかけをつくること。優しい気持ちを持つ人は、本当は足を止めたいはずです。でもそれができない、だから足を止めるキッカケをクリエイティブしました。

 

「カフェオレ好きの人ためのマッチです」

カフェオレ好きな人は多いので、気になりますよね。

 

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デザイナーコメント
日本一カフェオレが美味しい喫茶店を勝手に妄想し、そこに置いてあるマッチを想像しました。
場所は、京都北部の港町 伊根にある舟屋を改装した店舗 畳敷の日本家屋 。
その窓辺からみた海、おだやかで静寂な海を表現したデザイン味の記憶と共に、旅の記憶、風景の記憶も思いだすデザインに。

 

「マッチだけどつくのは火だけじゃないかもしれません」

いったい何が“つく”のか気になりますよね。

 

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デザイナーコメント
「気持ちが落ち“つく”」をテーマにデザインしました。
日本の伝統色「甕覗(かめのぞき)」を使って表現。  日本家屋の軒先にある、「甕甕に張られた水に映った空の色を覗き見る」 透け感のある淡いブルー。涼しげな、爽やかな色です。

 

「子供が中学生になって、 週末を持て余しているおじさんのためのマッチです」

ドキッとするお父さんは多いのではなないでしょうか。筆者も気になります。

 

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デザイナーコメント
実際に木を削らないと使えないマッチ。どうせ時間を持て余していると思うので 。使う時間は一瞬だけど、使うまでの時間を楽しむ 。2本あるのは、1本が自分、1本は奥さんに。

 

「搾りたてのマッチです」

マッチは搾るものじゃないので気になりますよね。

 

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デザイナーコメント
出来立て。常に新しい。新鮮なもの。 道の駅で、何処どこの〇〇さんが作りましたって、信頼できるし、購買意欲そそりますよね。 マッチでもそれを表現しました。 原料となるマッチの木を加工している中国某所の場所を記載してみました。

 

「シャイな人に使って欲しいマッチです」

みんな大体自分のことをシャイって言いますよね。(筆者もシャイです)どんなマッチなのか、とっても気になります。

 

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デザイナーコメント
シャイな人でも買いやすいアパレルブランドを勝手に妄想して、そこに置いてあるマッチをデザインしました。シャイな人でも踊りたくなるような、テンションが上がっているイメージ。 蛍光やくすみカラーなど洋服のカラーリングにある色のイメージ。

 

「マッチじゃなくてマッティです」

マッティ!!!???気になりますよね。

 

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デザイナーコメント
マダムが言いそう。「そこのおマッティー取ってちょうだい 」 マダム御用達フレグランスショップで売っているマッチをイメージ。 香りにこだわったマッチ。全体に大人でシックな雰囲気 エンボスやゴールドを用いて高級感を演出。
コピーライターコメント
もうマッチじゃなくていいんじゃないかなと思って。ただの思いつきですけど。

ロジカルの積み上げでは出てこないアイデアや、デザインが面白いですね。言葉とデザインで少し編集するだけで、人々の足を止めて、気持ちや感情を行動に移す突破力がクリエティブにはあると感じていただければ幸いです。

最後にクリエイティブな視点とは

クリエイティブな視点では、事実や固定観念にとらわれず、楽しさやノリ、直感を大事に、問題解決に対して柔軟なアプローチを持つことが重要です。クリエイティブな視点はアートやデザインに限らず、ビジネスや教育など様々な分野で多様性を促し、新たな可能性を開拓するきっかけにります。

植村 徹

PRODUCER / PLANNER

クリエイティブエージェンシーでCI/VI、ブランディング、TVCM、Web施策などを経験。デザインシンキングや編集思考を用いたワークショップやファシリテーションを得意とし、百貨店の売り場開発、ライフスタイル商材のブランドコンセプト開発などを行っている。

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