「マッチ売りの少女」の物語はマーケティング戦略などのビジネス本やブログで、どうしたらマッチが売れたかを様々なメソッドを用いて解説されることが多い定番です。そんなテーマをあえて取り上げるのは、クリエイティブの視点で語られていることがほとんどないから。論理的思考力を用いたマーケティングは必要ですが、窮地に立たされている少女にとって重要なのは感情を動かすクリエイティブです。今回は、誰もが知るお馴染みの物語で、人の行動に影響を与えるクリエイティブを、具体的な事例を通して解説します。当社デザイナーが今回のために作成したマッチのオリジナルデザインもお楽しみいただけます。
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例えば下記のような考察が散見されます。
身近なテーマに置き換えて課題を解決するのは常套手段なので、こういった考察も理解はできるのですが、筆者はふと疑問に思いました。「目の前の困っている少女を助けるのは、論理的思考ではなく感情のはずだ」と。少女に必要なのは論理的思考ではなく、感情を行動に変えるクリエイティブの視点が必要なはずです。
そこで少女を助けるために、改めて少女が置かれている状況を整理します。
ポイント
・売っているのは幼い少女であること
・差別化とか、マッチが必要かどうかは問題じゃない
・金額の問題じゃない
必要なのは手を差し伸べるキッカケ。
つまり
人が行動を起こす局面に必要なのは、
直感的に感情を動かすクリエイティブな視点
たまたま通りかかった一人の女性がメッセージを書き換えると、人々は足を止めるようになり、お金が集まるようになりました。まさに直感的に感情を動かしたクリエイティブな事例といえると思います。人々は感情移入できると、感情が行動に変わるんですね。
こちらはすっかり定着しているマタニティマークです。1999年にフリーライターの村松純子さんがはじめてつくり、各地域に拡がり現在に至ったようです。このマークのおかげて筆者も席を譲るなどの行動に起こしやすくなりました。注目したいのは村松さんのコメントです。
このコメントに筆者が伝いたいことが集約されていると思っています。誰もが持っている優しい気持ちを行動に変えること。その局面において力を発揮するのがクリエイティブだと思います。
目的は少女に手を差し伸べることなので、本来それがマッチだろうと、花の種だろうとなんでもいいのです。とはいえ、我々はクリエイティブエージェンシーなので簡単なアイデアに落とし込みました。大事なのは、足を止めてもらうために、興味を引くきっかけをつくること。優しい気持ちを持つ人は、本当は足を止めたいはずです。でもそれができない、だから足を止めるキッカケをクリエイティブしました。
カフェオレ好きな人は多いので、気になりますよね。
いったい何が“つく”のか気になりますよね。
ドキッとするお父さんは多いのではなないでしょうか。筆者も気になります。
マッチは搾るものじゃないので気になりますよね。
みんな大体自分のことをシャイって言いますよね。(筆者もシャイです)どんなマッチなのか、とっても気になります。
マッティ!!!???気になりますよね。
ロジカルの積み上げでは出てこないアイデアや、デザインが面白いですね。言葉とデザインで少し編集するだけで、人々の足を止めて、気持ちや感情を行動に移す突破力がクリエティブにはあると感じていただければ幸いです。
クリエイティブな視点では、事実や固定観念にとらわれず、楽しさやノリ、直感を大事に、問題解決に対して柔軟なアプローチを持つことが重要です。クリエイティブな視点はアートやデザインに限らず、ビジネスや教育など様々な分野で多様性を促し、新たな可能性を開拓するきっかけにります。
植村 徹
PRODUCER / PLANNER
クリエイティブエージェンシーでCI/VI、ブランディング、TVCM、Web施策などを経験。デザインシンキングや編集思考を用いたワークショップやファシリテーションを得意とし、百貨店の売り場開発、ライフスタイル商材のブランドコンセプト開発などを行っている。