Story

Owned Project

今の感覚を取り入れた新しいフォトコンテストを。

私たちは、コロナ禍に多くの制約の中で学生生活を送ることになった10代に目を向け、全国の高校1年生〜3年生を対象としたフォトコンテスト「#アオフォト2022」を企画。国内最大級の写真の学びサイトを運営する株式会社CURBONとともに開催しました。応募総数1,663作品。プロジェクトを企画した想い、そして数々の作品から感じ取ったものとは?

Project Info.
  • CLIENT: Owned Project
  • CATEGORY: BRANDING LOGO GRAPHIC
  • YEAR: 2023
SPEAKER
  • 高木裕次CREATIVE DIRECTOR / ART DIRECTOR
  • 高橋 梢PROJECT MANAGER

写真を撮ることが日常になった時代に

Q. このイベントを企画した経緯を教えてください。

高橋:元々は、株式会社CURBONと一緒に「ENCOUNTER」というWebメディアを立ち上げたのがきっかけです(https://encounter.curbon.jp/)。写真やフォトグラファー、写真を通じたあらゆるものとの「出会い」を創ることがコンセプトで、2021年11月のスタートから今も共同運営しています。弊社クリエイターのコラムも掲載しています。一度、全国の中高生が撮った写真を見る機会があったんですけど、それだけで終わらせるのがもったいないなと思って、それで企画しました。

Q. 学生を対象としたほかのフォトコンテストと何が違うのでしょうか?

高橋:歴史の長い権威ある大会はありますよね。でも伝統があるせいか、何かに凝り固まっているような印象を受けてしまったんです。

高木:なんとなくわかる。これが写真の教科書、お手本みたいな空気感にはちょっと違和感あるよね。

高橋:そうそう。今は写真を撮ること自体、もう日常の行為じゃないですか。だからスマホでもいいしデジタルでもフィルムでもいいし、いろんなものが自由にミックスされた、もっと新しい視点、新しい感覚のコンテストができないかなと考えたんです。

Q. コロナ禍というタイミングも企画に影響しましたか?

高橋:この時期の高校生活にフォーカスするのは今しかできないと思いました。ただ「コロナ禍で制約が多くて可哀想」というネガティブな感覚はあまりなかったです。その生活をフラットに見ている人は、私たちが思っている以上に結構いて、高校生たちの中にもいるんじゃないかと思っていました。高校生の目線、大げさに言うと、コロナ禍をどう生きているかという感覚がどう切り取られて、どう写真に映るのか、とても興味がありましたね。

心動く作品は自分の体験を思い出させてくれる

Q. 応募作を見た感想を教えてください。

高橋:すごくいいな!というのが第一印象です。それと、「あっ、高校生は何年生でも別にそんなに変わらなかった」と思いました。
じつは当初、高校3年生だけが対象だったんです。コロナ禍で外部のカメラマンが校内を撮れないケースも多いので、高校3年生が自分たちの日常を自分たちで収めた卒業アルバム、というのがテーマでした。でも、同じように学生生活を送る高校1、2年生の視点も加わったほうが、企画としての盛り上がりも生まれると考えて対象者を拡げました。
実際に応募作を見て、3年生も1年生も表現しようとしていることは変わらないし、コロナ禍の思いや生き方が伝わってきたし、温度とか空気とか風が本当に感じるような気がしましたね。高木さんはどうだった?

高木:数がとにかくすごかったですよね。1,663作品すべて見るのはキツかったです(笑)。ただ見るだけじゃなくて選ばないといけないので。「このアオフォトという企画で、こういう写真で撮ってくるんだ!」という作品があって面白かったですね。

Q. どんな審査基準で作品を選んだのでしょうか?

高木:まずは、コロナ禍で行事やイベントができない中でも、自分たちの学生生活のエモーショナルな部分が表現されているかどうかですね。それと、自分のため、友だちのために撮った写真だとは思いますけど、コンテストである以上やっぱり目新しさや表現としての強さも見ましたね。
あとは、自分の学生時代はコロナ禍ではなかったけど、当時こんな感じだったなと思い返させてくれるものは選びたくなりました。それって、自分の心が動かされたということだと思うんですけど。「こんな写真、どこかで見たことあるよね」という予定調和な写真だとパブリックなイメージが先行して、自分の学生生活を思い返せないし、純粋に感動しないですよね。
受賞作の一つに、教室に差し込んだ光と、そこに浮いているホコリを撮った写真があります。表現としても綺麗ですけど、「掃除の時間って、そうそう、こういう感じだったな」と思い出しました。

高橋:高校時代が遠い昔というよりも、本当におこがましいですけど、つい最近のような気持ちにさせてもらいました(笑)。 学生生活って変わらないなとか、今はこんな感じなんだとか、心が動く作品にはそういう発見がありますよね。

アオフォトは誰でも撮れる写真だから意味がある

Q. 高校生にとっては、写真だけでなく動画も身近な存在ですよね?

高橋:写真・動画というアウトプットにとらわれず、自分たちの撮りたい方法で応募してもらうアイデアも企画検討の際にはありました。動画にはいろいろな構成要素があってその全部の要素で伝わることもあるとは思いますけど、応募作には、撮る人のその瞬間の感情とか受け手が連想するイメージとか、そういうものが凝縮して詰まっていたので、結果的に写真で良かったかなと思っています。

高木:動画だと技術力の差も出ると思います。技術力を競うコンテストになってしまうのは違うかなと。動画は音楽の良し悪しが8〜9割とよくいわれるんですけど、音楽のアリ・ナシなしやカット割りで受ける印象が全然違いますよね。当然、技術も大事ですけど、今回のコンテストは、技術力に関係なく高校生が誰でも撮れる「写真」であることが重要だったと思います。

Q. AIが簡単に画像を生成できる時代になりました。そんな中、写真が持つ価値とはどんなことでしょうか?

高橋:こういうものを作りたいという条件で効率的にアウトプットするのは、AIはとても上手だと思います。今回の写真も絶対にAIでは作れないとは言い切れないけど、再現できないものは何かしらあったんじゃないかなと思います。特に今回のような、技術じゃない写真においては。

高木:自分たちが仕事で使う写真に関してはAIで代替がきく可能性は大いにあるけど、アオフォトに関してはリアルじゃないと意味ないですね。本人や周りの友達が5年後、10年後に見返して「アオフォトっていうコンテストがあって、そのとき撮った写真か。懐かしいー」と思えないと、写真である意味ないじゃないですか。コロナ禍の3年間の私が見た景色。それは絶対にAIにはできないと思います。

高橋:書籍化が決まりましたけど、今後また開催したらAIで作って応募する高校生が現れるかもしれないですね。それが彼らのアオフォトかもしれないし、もしかしたらそれで心が動かされるかも?

高木:それはそれでいいのかもね。手法やツールは何でもよくて、個人の表現としての写真であれば、心が動くんだと思います。

高橋:そうだね。そこが、いわゆる伝統的なコンテストと真逆のことをやりたかったという最初の話にもつながるんですけど、技術やポーズだけじゃない高校生のパーソナルな部分が見えたらいいなと思っていたので、今回「アオフォト#2022」が実現できて本当によかったです。

#アオフォト2022
https://encounter.curbon.jp/special/aophoto2022-2/

SPEAKER

高木裕次

CREATIVE DIRECTOR / ART DIRECTOR

高橋 梢

PROJECT MANAGER

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Design Case Study 2023

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