POLA
行動指針に「We Care More. 世界を変える、心づかいを。」を掲げ、美容と健康という枠組みにとらわれず、人・社会・地球、そのすべてをケアすることを目指すPOLA。その取り組みの一環として、POLAのホテルアメニティ容器を使った「リサイクル知育パズル」を開発しました。パッケージラベルとパズルのワークシートをデザインしたDynamite Brothers Syndicate(以下DBS)のデザイナー玉城野乃子と土江瑚子に、デザインのプロセスや込めた想いについて聞きました。
Q.今回、POLAが「リサイクル知育パズル」を開発することになった背景について教えてください。
玉城:POLAは会社の環境方針として、持続可能な物作りを大切にしています。その一つに、2029年までに化粧品プラスチック容器・包材について4R(※)に基づくサステナブルな設計に切り替えることを目標に、プラスチックの使用量の削減や、再生プラスチックを使用するなどの取り組みを進めています。そうした中で、今回POLAが提携する旅館やホテルのアメニティ容器をリサイクルして活用しようというプロジェクトが立ち上がりました。
POLAは、化粧品の会社ということもあって、子どもたちの美意識を育む環境づくりを目指す「SEMCA(セムカ)」という感性教育の活動も行っているのですが、そうしたベースを生かして、子どもたちが、旅先で新しいものに出会い、触れ、美意識を養うこと、そして環境配慮について学ぶ機会を提供したいと、「リサイクル知育パズル」を作ることが決まりました。
※Reduce(使用量を削減する)、Reuse(繰り返し使用する)、Replace(他素材に置き換える)、Recycle(資源を循環し使用し続ける)
Q.そうしたPOLAの想いを聞いて、どんな感想を抱きましたか?
玉城:企業がこうした形で教育に関わるという例を他に知らなかったので、面白いと感じると同時に、「美」や「感性」に深く関わる化粧品の会社だからこそ、できることをしようとする姿勢は素晴らしいなと思いました。
土江:社会のために、未来のために、という視点から、子どもたちの教育に目を向けるのは、とても素敵だなと思いました。感性教育や知育ということにも初めて触れ、私自身学びにもなりました。こうした大きな企業の取り組みをきっかけに、「自分にもできることがあるかもしれない」という想いが広がっていくといいですよね。
Q.通常DBSでは、アートディレクターが先頭に立ち、チームで仕事をしますが、今回は有志のデザイナーの二人が協力し合う形で、案件を担当しました。そこでの新たな気づきなどはありましたか?
玉城:私はこの案件の内容を聞いたときに、デザインのイメージがすぐに湧いたのですが、それが土江さんとすごく近かったんですよね。それもあって、その後のデザインプロセスも、わかり合える部分がすごく多くて嬉しかったですね。
土江:複雑な内容の案件の場合、アートディレクターを通した方が、クオリティを担保できる安心感があります。一方、今回は玉城さんとダイレクトにコミュニケーションを取ることができたので、スピーディーに進行ができ、形にできるまでが早かったなという印象です。
そもそもお二人が、この案件に手を挙げたのは、どんな理由からだったのでしょうか?
土江:私はもともと環境問題に対して、興味がありました。学生時代、オーストリアに留学していたとき、人々の環境に対する意識が日本よりかなり進んでいることに影響を受けて、自分も何かしなくちゃと思った経験があって。ただ、実際多くの人がそうであるように、自分は何をしたらいいか、何ができるかわからなくて。そんな中この案件に出会い、やってみたい! と思いました。
玉城:私はもともと教育関連のデザインの会社にいたこともあって、子どものためのデザインについてはもっと深めたいという想いがありました。今回はこれに加え、サステナブルや、環境問題というトピックも関わっていたことが、大きな魅力でした。というのも、最近、この時代に生きるデザイナーとしての役目みたいなことをよく考えるんです。
例えば、今の社会を引っ張っているのは、私たちの上の世代が作った産業や文化ですよね。じゃあ、私や私の下の世代は、と考えたとき、それを持続可能にしていく、あるいは最適化していく、みたいなことが求められているんじゃないかと思うんです。わかりやすく言うと、今ある便利さや、豊かさを、未来へと引き継いでいくための課題を解決していくということ。そうした役割を果たすため、できることはどんどんやっていきたいという想いがあります。
Q.DBSは、具体的にどういった部分に関わったのでしょうか?
玉城:「リサイクル知育パズル」をどのようにアウトプットするか、具体的にはパッケージのラベルや、パズルの見本として使用するワークシートのデザインに携わりました。
土江:子ども向けの商品ということもあって、最初はラベルの色をカラフルにしようというアイデアもあったのですが、このパズルの一番の特徴は、廃棄されたプラスチック容器を使っているということ。そのため、容器の色が映えるデザインにしました。そうすることで、「この色、見たことがある」と、POLAの取り組みに気づいてくれる機会にもなるのではと思いました。
玉城:パッケージラベルのカラー設計もこのパズルの色が軸になっています。ポップで賑やかな世界観はPOLAの美意識にそぐわないと考え、色数を4〜5色に絞り、全体を優しい色合いでまとめ“POLA”らしさを表現しました。
パズルとセットになっているのは、ピースを組み合わせてできる花や動物といった形のバリエーションを示したワークシートです。レベル別に2パターンがあるのですが、いずれもパズルの形をただ単純に並べても面白くないので、シートを一つの世界に見立て、海の生き物や植物、家などを配置。一枚の絵としても楽しめるデザインに仕上げました。
Q.宣伝用写真も撮影されたとか。
玉城:プレスに掲載する写真ということもあって、ぱっと見で目を引くような可愛らしさを出したいと、撮影方をあれこれ考えました。思いついたのがアクリル板。透明な板を通して映る色の影や、キラキラした光によって、パズルの素材感を引き出すとともに、楽しそうな雰囲気を演出しています。
Q.パズルのパッケージ(ケース)には、環境問題やリサイクルに関する知識など、さまざま情報が詰まっていますね。
玉城:やはり、このパズルに込めた意図をしっかり伝えたい、というPOLAの想いが大きく、当初は今の倍以上の情報を入れたいという要望があったんです。でも、子どもに向けた製品ということもあり、あまり情報詰め込みすぎると「なんだか難しそう」と敬遠されてしまう。そこで、できる限り必要な情報を精査し、データなどは、イラストや図にして、できるだけ余白が取れるようレイアウトを考慮しつつ、見やすさを考えたレイアウトを工夫しました。
実際、遊ぶ子どもは、どこまでパッケージの内容を読み込んでくれるかはわかりませんが、そばにいる親御さんが、リサイクルや環境問題について知識を深めることで、子どもに教えてあげられることがあるだろうなと思うんです。そう考えると、親向けに小冊子などをつけられたら、もっと伝えられることが増えたかもしれません。
今回は作る数も限られていたので、断念せざるを得ない部分もありましたが、このプロジェクトが今後もっと世に広がっていけば、よりよい形で、ブラッシュアップしたものもできるのではないかと期待しています。
お二人とも、今回の案件をきっかけに、「自分にできること」を考えたとのこと、この経験を活かして今後はどんなデザインに取り組んでいきたいですか?
玉城:デザインって、人の想いや気持ちを社会に届けるために、絶対に必要な作業だと思うんです。デザインによって背中を押してもらえたり、より伝わりやすくなったりする。私は「誰かの勇気を出してあげたい」みたいな気持ちがずっとあって、今後も、それを軸に自分ができることを模索していきたいですね。
土江:今回この案件に関わって、より環境に対する意識を持つことができましたし、今後、自分がデザインを通じて伝えていきたいことが見えてきたような気がします。ただモノやサービスを素敵に見せるということではなく、そこにある想いをどうしたらもっと伝わるか、ということを大切に、デザインという届ける力をもっと養っていきたいなと思っています。
玉城野乃子
DESIGNER
土江瑚子
DESIGNER