Story

OSK日本歌劇団 / 梓設計

周年をデザインすると未来のMAPが描ける。

企業やブランドの周年事業では、社史やスペシャルサイトから、ロゴマークやスローガン、グッズ、イベントまで、さまざまな施策が実施されます。今回は、数々の周年関連ツールを手がけるアートディレクターに、そのデザインのポイントを聞きました。

Project Info.
  • CLIENT: OSK日本歌劇団 / 梓設計
  • CATEGORY: ART DIRECTION EDITORIAL
  • YEAR: 2023
SPEAKER
  • 細野 隆博ART DIRECTOR

周年で伝えるのは歴史だけじゃない

Q. 最近はどんな周年事業に関わったのでしょうか?

細野:OSK日本歌劇団の創立100周年ですね。創立100周年記念コンサートなどを撮り下ろした、全254ページに及ぶ「桜咲く国OSK日本歌劇団創立100周年記念写真集」と、公演先のグッズとして販売された「OSK日本歌劇団創立100周年記念フォトブック」をデザインしました。
写真集は、表紙からは記念公演の第1部、裏表紙からは記念公演の第2部、真ん中からは記念コンサートというページ構成にしています。100周年記念といっても、歌やダンスやミュージカルなどいろいろな舞台があるので、それぞれの魅力がより際立つようにしました。写真はフォトグラファーの宮本卓さんによるもので、舞台の臨場感が伝わる写真集に仕上がりました。
OSK日本歌劇団は、宝塚歌劇団・松竹歌劇団と並ぶ三大少女歌劇の一つといわれていて、創立当時からモダンです。だから、古臭く見られないように注意しました。どんなに長い歴史があっても、それだけを伝えるのではなくて、この歌劇団ならではの「格」みたいなものが感じられるようにしましたね。

Q. ほかに印象的な周年事業を教えてください。

細野:社史や周年史は一般的によくありますが、組織設計事務所、梓設計の創立75周年には、「新建築」という建築専門誌の記念特集号をまるごとデザインしました。タイトルや誌面のコンセプトから一緒に考えましたね。
まずはプロジェクトメンバーで「WE ARE」というテーマを設定して、それをもとにロゴを制作しました。これまでの梓設計はニュートラルなイメージだったんですが、すでに新しい領域とコラボレーションを進めていたり、多様性に対する考えを持っていたりするので、それをさまざまな書体を組み合わせて表現しています。キーカラーは最も梓設計らしくない色をあえて採用して、雑誌のサイズも従来の「新建築」と別の判型で、周年の特別感を未来への広がりを表しました。
梓設計は空港やスタジアムなどの建築設計が有名ですが、過去の作品紹介は雑誌全体のうちの一部です。変化を続ける組織設計事務所の現在を読者が理解したり、これからの建築設計について思考できたりするように、未来の都市や組織設計事務所のあり方や、働き方を提案する社内コンペを掲載しています。
そういうコンテンツがあるからこそ、建築や都市が複雑化する時代に活動領域を広げている梓設計らしさが伝わったと思います。建築に興味ない人が読んでも「梓設計って面白い」と言ってもらえる1冊になったのではないでしょうか。

Q. 周年にまつわるツールやアイテムをデザインする際に大事なことは何ですか?

細野:今回紹介したプロジェクトには多くの人が関わっていて、その人たちと一緒に周年を迎えたような印象を受けました。OSK日本歌劇団の場合はファンの方々、梓設計の場合は社員や関係者です。
だから、歴史とか実績とか、記念事業のプレミアム感はもちろん大事にしますが、単純にレトロだったりノスタルジックにするのではなくて、今までのファンがより誇りに思いながら新しいファンも取り込めたり、自分たちの会社にもっと誇りを持てたりするような作りを目指しました。
振り返るだけじゃなくて、未来に向けての1冊にするということです。周年事業をデザインすることは、未来のMAPをデザインすることにつながるかもしれませんね。

SPEAKER

細野 隆博

ART DIRECTOR

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