ブランディングとは、企業や商品・サービスが持つ独自の価値や考え方を消費者に認知させることで、競合他社との差別化を図るプロセスを指します。
ブランディングが成功すると「このブランドを選ぶ理由がある」といった形で、消費者から支持されるようになります。
本記事では代表的な10例の成功事例とともに、ビジネスやマーケティングの成功において欠かせないとされる「ブランディング」について、成功の秘訣を解説します。
ブランディングとは、企業や商品、サービスが持つ独自の価値や考え方を消費者に認知させることで、競合との差別化を図るプロセスです。
ブランディングが成功して企業の知名度が上がり、自社の強みやポジションが消費者に認められると「このブランドだから選ぶ」というように特別なブランドとして支持されるようになります。
企業の掲げるポリシーやストーリーが世間からの共感を得ることで、信頼感や親しみが増します。
これにより新規客へのアプローチだけではなく、長期的なリピーターの獲得も期待できます。
ネームバリューが高まることで、広告費をかけなくても消費者から選ばれやすくなり、価格競争に巻き込まれにくくなるというメリットがあります。
このように、ブランディングとは「選ばれるための仕組み作り」とも言え、効果的に適用することで競争が激しい市場において持続的な企業の成長を可能にします。
誰もが一度は聞いたことのある有名な企業や商品は、ブランディングの成功例として挙げられます。
ここでは、企業ブランディングに成功した10の事例をご紹介します。
Red Bullは、エナジードリンクの世界的トップブランドであり、ブランディングの成功によってエナジードリンク=レッドブルと言われるほど、確固たる地位を確立しています。
従来の栄養ドリンクのように疲れを癒すためではなく、気分を盛り上げたい時に飲む物とアピールしたことで「オシャレでイケてるドリンク」というイメージの確立に成功しました。
「翼をさずける」というキャッチコピーが印象的なテレビCMや、巨大なレッドブルの缶を乗せた宣伝カー、若者の人気スポットを中心とした街中でのサンプリングといった独自のマーケティング戦略は、SNSなどで大きく話題を呼びました。
クラブやバーといった施設でキャンペーンを行ったり、エクストリームスポーツとスポンサー契約を結んだりなど、メジャーなキャンペーンとはかけ離れたブランディング戦略によって、レッドブルは「新しいもの好き」の若者の心を掴んだのです。
Googleは、主にインターネット関連のサービスを提供する企業です。
検索エンジンが最も知られていますが、他にもGmail(メールサービス)、Google Drive(クラウドストレージ)、YouTube(動画共有プラットフォーム)、Google Maps(地図サービス)など、多岐にわたるサービスを展開しています。
見る人にクリーンなイメージを与える、シンプルかつ直感的なデザインで統一されたGoogleは、イノベーションの先駆者としてユーザーから高い評価と信頼を獲得しています。
最新技術の導入だけではなく、利用者の住む地域に合わせたコンテンツ提供や、約240言語もの翻訳機能などのグローバルなサービス、再生可能エネルギーの使用やデータセンターの省エネ化、地球環境に貢献するイベントの開催などのブランディング戦略によって、世界中の消費者から愛されるブランドイメージの確立に成功しています。
ヤンマーは、主に農業機械を中心にエンジンを製造・販売している日本の企業です。
創業100周年の2012年に、次世代に向けて持続可能な資源循環型社会の実現を目指すプロジェクトを立ち上げ、伝統的かつ庶民的なメーカーというイメージから先進的なメーカーへとリブランディングを行っています。
「ヤンマープレミアムブランドプロジェクト」ではプロダクトデザインやウエアデザイン、ロゴを近代的なビジュアルに一新し、時代に合わせて生まれ変わったヤンマーブランドを表現しました。
また、「農業を支える技術」をコンセプトに、ヤンマーの高い技術力を世界に向けてアピールしたことが高く評価され、現在では農業だけでなくマリンインダストリー、建設機械、さらにはエネルギーへと事業拡大に成功しています。
サントリーは、日本を代表する飲料メーカーです。
ビール、ウイスキー、清涼飲料水など、幅広い製品ラインを展開することで、様々な顧客ニーズに応え、ブランドの親しみやすさを高めています。
サントリーは2005年から「水と生きる」というキャッチコピーを掲げ、自然や地域との関係を重視したブランドストーリーを構築しました。
「人と自然を大切にする」という企業理念が消費者の共感を呼び、環境保護に力を入れている企業として確固たる地位を築いています。
また、サントリーウイスキー「山崎25年」や「響30年」が、酒類の国際コンペで数々の賞を受賞したことにより、プレミアムで上質なイメージの獲得にも成功しています。
Appleは革新的な技術と共に、おしゃれ・スタイリッシュ・洗練されている、というブランドイメージを作り上げることに成功しました。
直感的な操作性やブランドロゴ、パッケージデザインに至る隅々まで、Appleならではの洗練された「シンプルデザイン」で他社との差別化をはかり、ユーザーがApple製品を持つことに特別なステイタスを感じるように工夫されています。
新製品のリリース時には「Think different」というキャッチコピーとともに、アインシュタインやピカソ、ガンジーなどの画像を使用し、Appleも彼ら同様に時代の先駆者であるということをアピールするなど、ユーザーの感性に訴えかけました。
ニーズを先回りして進化し続ける最先端のデザイン・機能はAppleの象徴であり、世界で最もブランディングに成功した企業とも称えられています。
星野リゾートは、高級旅館やリゾートホテルを運営する日本の企業です。
「リゾート運営の達人」を企業コンセプトに掲げる星野リゾートは、3つのリゾートブランドを運営しています。
それぞれのブランドは「非日常」「上質な温泉旅館」「大人のファミリーリゾート」というように明確なコンセプトを持ち、ターゲット層に応じた独自の体験を提供しています。
また、地域の特色を活かすことも重視しており、それぞれの旅館にオリジナリティをもたせることで他社との差別化も実現しています。
これにより、家族連れやカップル、ビジネス客、海外からの旅行者など多様なニーズに応え、幅広い顧客に愛されるリゾートとしての地位を確立しています。
NIVEA(ニベア)は、ドイツ発のスキンケア用品ブランドで、1911年の創業以来ブランディングに注力している企業のひとつです。
NIVEAは青い缶のスキンケアクリームで有名です。
1925年に「ブルー缶」を開発して以降、この親しみやすい青色を基調としたビジュアルアイデンティティを維持してきました。
また、「信頼」や「愛情」をブランドイメージとして打ち出しており、この想いがユーザーの共感を呼び親子3世代にわたって愛用されるなど、ブランディングを通じて世界中で多くのファンの獲得に成功しています。
ダイソンは、紙パックを使わないデュアルサイクロン式の掃除機を開発した企業です。
「吸引力の変わらないただひとつの掃除機」という力強いメッセージを耳にしたことのある人も多いのではないでしょうか?
このたった一言で、顧客はダイソンの革新的で優れた性能を想像することができます。
技術的に成熟し尽くしていると思われていた家電業界に、圧倒的な技術力と高いデザイン性を持って参入したダイソンは、掃除機から空気清浄機、ドライヤーまでブランドイメージを一貫させた製品を展開し、「ダイソンらしい」という唯一無二のポジションを築き上げることに成功しています。
とらやは、日本の伝統的な和菓子メーカーで創業は室町時代後期にさかのぼります。
約480年にわたる伝統と職人の技術を武器に、高級感・伝統・品質・信頼性を象徴する一流和菓子ブランドとしての地位を確立しています。
和菓子といえば「とらやの羊羹」や、印象的なロゴを思い浮かべる人も少なくありません。
また、近年では「とらやの良さ」を活かしつつ、洋菓子風のアレンジを行った和菓子の商品展開や、TORAYA CAFEやヨーロッパへの出店など、芯を持った改革的なリブランディング戦略により外国人や若年層など新しい顧客層の取り込みにも成功しています。
ブランディングが成功した企業として、世界中で展開しているアメリカ発のコーヒーチェーン、スターバックスも有名です。
高品質なコーヒーや軽食、スイーツ、オリジナルグッズなどを提供しており、季節ごとに登場する新作ドリンクや、ドリンクのカスタマイズにおいて独自の戦略を展開し、他社との差別化を図っています。
また、高級感がありながらもゆったりと居心地の良い店舗は、顧客を引き付ける魅力を放っています。
お店のオシャレなインテリア、間接照明、くつろげる音楽、フレンドリーなスタッフなどにこだわり、「スタバでコーヒーを買う」という体験そのものに価値を与えています。
スターバックスを、家でも職場でもない第3の居場所「サードプレイス」と表現したことが多くの共感を呼び、リピーターの獲得にも成功しています。
ブランディングを成功させるには、いくつかのポイントがあります。
ここでは、効果的にブランディングを行うためのポイントと注意点をご紹介します。
ブランディングにおいて、競合他社と明確に差別化することは非常に重要です。
独自の特徴や強みを生かしたキャッチコピーを作成したり、他社では行っていないようなユニークなサービス提供したりするなどの工夫で、消費者に対して自社のオリジナリティを伝えることができます。
独自性を持たないブランドは、消費者がブランドを識別できない状態を生み出し、競争の中で埋もれてしまいます。
ブランドの使命、価値観、強みを明確に定義し、他社との差別化を図ることで、消費者に強い印象を残すことができます
また、ブランドのコンセプトや提供する価値を伝えるためのストーリー=ブランドストーリーを作ることで、社会からの共感や感情的なつながりを促す効果が期待できます。
ブランドストーリーの基盤となるのは、自社のルーツや創業の背景です。
自社の起源や歴史、創業者のエピソードを探り、ブランドの原点や独自性を明確にしましょう。
魅力的なブランドストーリーを発信することで、自社に対する印象をポジティブに変えることができます。
顧客からの信頼を得るためには、顧客からのフィードバックを積極的に取り入れて、ニーズや心理を深く理解することが重要です。
つまり、顧客満足度の向上に注力することで「信頼できるブランド」としての印象を確立することができます。
顧客との関係を強化してより良い体験を提供し続けていくことで、持続的な信頼関係を築いていくことが可能です。
ブランドの一貫性を保つ重要性
ブランドの持つメッセージにおいては、一貫性を保つことが重要です。
自社のコンセプトやビジョンを明確にし、消費者に一定のイメージを定着させることがポイントです。
ブランドの価値観や声を統一し、常に一貫したメッセージを発信することで、顧客の心に強い印象を与えることができます。
ブランドメッセージやビジュアルアイデンティティがコロコロ変わってしまうような状況では消費者の混乱を招き、ブランドに対する信頼を失ってしまうため注意が必要です。
成功すれば大きな利益をもたらすブランディングも、失敗すると企業の信頼性に深刻な影響を与える可能性があります。
1985年に行われた、コカ・コーラ社の「ニューコーク」キャンペーンがその例です。
消費者の好みを調査してコカ・コーラの味を刷新したにもかかわらず、消費者からの大きな反発を受けてしまい、結局元の味に戻す事態となってしまいました。
なぜこの様な事になってしまったかと言うと、消費者との「感情的なつながり」を理解せず、単純に「美味しさ」だけで今までのブランドイメージを一方的に壊してしまったためです。
今までのコカ・コーラの味とは消費者の「青春の味」であり、一方的にその思い出が失われた消費者のショックは、企業の予想をはるかに超えるほど大きいものでした。
教訓として言えることは、企業は一貫したブランドイメージ・価値観を保たなければならないということです。
市場の変化に対応して新しいアイディアを出すことももちろん必要ですが、消費者との感情的なつながりを大切にし、深い絆を築くことがとても大切です。
まとめると、他社との差別化を図る戦略と、顧客のニーズや心情の理解、ブランドの一貫性を維持することがブランディングにおいてのポイントと言えます。
ブランディングを行う際には、以下の手順で進めることがおすすめです。
ブランディングを成功させるための最初のステップは、その目的を明確に定義することです。
ブランディングを行うことで消費者にどのようなメッセージを伝え、どのような印象を与えたいのか、どの様な価値を提供したいのかを明確に定義することで、ブランド戦略が一貫したものになります。
ターゲットのニーズや思考を理解することで、ポジショニングを上手く行うことができます。特定の層に特化したブランドメッセージを発信することで、「この層はこのブランド」という消費者からの印象を強化することができます。
次に、自社の状況について分析しましょう。
すでに定着しているブランドイメージが、必ずしも自社が発信したい内容に沿っているとは限りません。
本来のターゲットに浸透していなかったり、企業が発信したいブランドイメージとは正反対のイメージが定着していたりするケースもあります。
消費者と企業側の価値観にギャップがある場合は、まずその違いを明確に理解することが重要です。
ブランドアイデンティティとは、ブランドが消費者にどのように認識され、どのような印象を与えるかを示す要素を指します。
一般的に、以下の様な要素が含まれます。
ロゴ:ブランドを示すシンボルやマーク
色:ブランドを象徴する色合い
フォント:ブランドの公式な書体
トーン:コミュニケーションのスタイルや言葉遣い
ビジョン:ブランドの目的や目指す方向性
価値観:ブランドが大切にしているポリシー
ブランドアイデンティティは、消費者との感情的なつながりを築くための大切な基盤であり、競合との差別化にも重要な役割を果たします。
ブランドアイデンティティを明確に定義することで、ブランドの一貫性を保ち、顧客に強い印象を与えることができます。
ブランディングを成功させるためには、効果的なマーケティング戦略が不可欠です。
ブランドを世間に浸透させるためには、以下のような方法があります。
テレビCMや新聞折り込み広告、街頭広告、ラジオ広告などのマスメディアは、幅広い世代に情報を発信できる効果的な手法です。
短期間で多くの人にブランドメッセージを届けられるだけでなく、視覚や聴覚に訴えることで印象に残りやすくなるというメリットがあります。
テレビCMで聞いたフレーズが頭から離れなくなった、という経験を持つ方も多いのではないでしょうか?
ただし、一定の効果が期待できる一方で他の広告手法と比べて費用負担が大きいという点や、若い世代のテレビ離れが進んでいるという点がデメリットとして挙げられます。
費用対効果やターゲット層を十分に考慮しながら戦略を策定することが重要です。
Web広告が主流となりつつある現代においては、自社のウェブサイトやSNS、インフルエンサーを活用したマーケティングも効果的です。
近年人気のSNSや動画投稿サイト、Web広告を活用した発信は、マスメディアよりも低コストでありながら、幅広いユーザーへブランドの背景や想いなどといった詳細な情報を消費者にアピールできるというメリットがあります。
また、フォロワーの多いインフルエンサーに自社の商品やサービスを紹介してもらうことで、ブランドの認知度や信頼感をぐっと効率よく高めることができます。
他にも、取引先に渡すパンフレットや封筒に自社のアイデンティティを盛り込んだデザインを採用する、会社案内やブランドブックなどの冊子を配布するなど、ブランドを浸透させるための戦略は多岐にわたりますが、いずれの手法でも一貫したメッセージを発信することが重要です。
ブランディングの成功を実現するためには、これら施策の効果を定期的に調査・分析し、必要に応じて改善を行うことが重要です。
定期的なマーケティングリサーチを実施して消費者のニーズや市場トレンドの変化を理解することで、自社の商品やサービスがどのように受け止められているかを把握する事ができます。
また、SNSを活用して顧客とのコミュニケーションを図ることもおすすめです。
SNSはリアルタイムでのフィードバックを受けることができ、顧客の期待やニーズを迅速に把握する事が可能です。
消費者の声を素早く反映させることで顧客満足度の向上に繋がり、「このブランドが好き」このブランドだから利用する」という消費者からのブランドロイヤリティを高めることができます。
こうした努力を重ねることでブランドの認知度と評価を高め、長期的な成功を目指すことが可能になります。
ブランディングは、企業や商品の独自の価値を消費者に伝え、競合との差別化を図るプロセスです。
成功することで、企業の知名度が上がり、信頼や親しみを得られるといった効果が期待でき、持続的な成長を促進する基盤となります。
また、新規顧客のみならずリピーターを獲得しやすくなることで、価格競争から脱却できるというメリットもあります。
ブランディングを成功させるには、他社との差別化を図る戦略、顧客のニーズや心情の理解、ブランドの一貫性を維持することが重要です。
自社の強みや特徴を活かしながら、消費者の視点に寄り添ったブランディング戦略を実施していきましょう。
1万冊以上の雑誌づくりを通して、これまでさまざまなトレンドやマーケットを生み出してきたDynamite Brothers Syndicate。その経験から得た「編集」と「アートディレクション」によって、現在多くの企業のブランディング・デザインをサポート。ブランドの核となる世界観を構築し、デザインの先にある新しい価値を創造します。