ビジネスパーソンのリラックス空間を
日本のファッションカルチャーを愛するオーナーが思い描くのは、都心で働くアパレル関係者や感度の高いビジネスパーソンがリラックスできるカフェのような空間。そこで、その理想を形にすべく、dog goodsショップ「the park」店主であり、さまざまな店舗ブランディングを行うparkproject.inc代表の中村伸也氏と、私たちDynamite Brothers Syndicateがプロジェクトに参画しました。
東京・千駄ヶ谷、国立競技場の向かい、黄色い建物でお馴染みの老舗ラーメン屋の隣にオープンした「スタンド以上カフェ未満」の小さなショップのブランディングを手がけました。店舗のコンセプト策定やメニューの選定から関わり、ロゴやパッケージのデザイン、空間設計のディレクションにとどまらず、一部商品は風味や食感などを監修。細部までこだわり、この空間ならではの体験を創り上げました。
日本のファッションカルチャーを愛するオーナーが思い描くのは、都心で働くアパレル関係者や感度の高いビジネスパーソンがリラックスできるカフェのような空間。そこで、その理想を形にすべく、dog goodsショップ「the park」店主であり、さまざまな店舗ブランディングを行うparkproject.inc代表の中村伸也氏と、私たちDynamite Brothers Syndicateがプロジェクトに参画しました。
物件は、アパレルブランドが集中する渋谷区千駄ヶ谷に決定。メニューやショップデザインを具体化するにあたり、私たちは都内各地のカフェを現地調査しました。こだわりが感じられる店やブランディングがなされている店に共通するのは、独自のコンセプトに基づき、インテリアやユニフォーム、販売方法が特徴的であること。単にコーヒーや、コーヒー片手に語らうひとときだけでなく、その店でしか味わえない体験が存在すること。それは、洗練されたカフェが乱立する現在の状況下で開店・営業する必須条件と考えました。
コンセプトを策定するうえで重視したのは、訪れた人にリラックスしてほしいというオーナーの要望。上質なものをセレクトし販売する営業方針。そして、高い審美眼を持つ、いわゆる〝業界〟の人々が集まる地域性も念頭に置き、それらをもとにさまざまなネーミングとコンセプトを提案しました。その中から決定したコンセプトは、店で落ち着くのはもちろん、さらに「目線が上がる、街角の新しい起点」となること。そのため、ほかと比較して素敵な商品が並ぶように、またベンチ=リラックスを連想できるように、店名を「benchmark TOKYO」と名付けました。
コンセプチュアルなネーミング「benchmark TOKYO」、代表的メニューであるコーヒー、立地を含む空間。この3つのアイデンティティをベースとしながら、「自分たちがカッコいいと思えるか」という感覚も基準にデザインをスタートしました。そこには、一般的な「高級感」「シンプル」のみならず、個人的な「遊び」「クセ」のエッセンスも加えることで、同じような嗜好や価値観を持つ人のアンテナに届けるという狙いがありました。
ロゴマークは、さまざまなアイデアをベースに検証・提案を重ね、最終的にはコーヒーの水面の揺らぎや国立競技場から吹き抜ける風を想起させながら、インダストリアルな空間に感じる和の心を、ミニマルなシルエットに落とし込みました。空間設計を手がけたのは、インテリアデザイン&プランニングを手がけるFILE。コンクリート打ちっぱなしの壁、暖簾、エスプレッソマシン、チューブライトを象徴的に見せ、〝スタンド以上カフェ未満〟の独特な空気感を漂わせました。
ロゴデザインや空間設計と並行して進めたのが、メニューの選定とパッケージデザイン。コーヒーは、京都のカフェ、hereの山口淳一氏による豆のセレクトと焙煎が決まりました。コーヒーと同様に、ミシュラン星獲得の和食店が作るアイスクリームも、膨大なサンプルからカップやスプーンをセレクト。クッキーは、おいしく、しかも主流の柔らかいタイプとは異なる硬さと厚さを追求し、神戸のブーランジェリーBienvenueの大下尚志シェフと試作をくり返して完成しました。パッケージには、外国人客を意識して和のテイストを感じる茶筒を提案し、最適な枚数を検証。パッケージはすべて、過度な装飾を施さず、機能的で必要十分と思えるデザインを施しています。
Webサイトは、全国から良質な商品を厳選したショップらしく、メニューが際立つデザインに。First Viewはロゴと揺らぐモーションのグラフィックを組み合わせることで、店のシンボルの一つである暖簾を再現するとともにリラックス感を表現。一方、写真はドリンクやフードのシズル、心地よい空間や国立競技場に近い地域の雰囲気を感度の高い視点で切り取り、オンラインやSNSで発信するため、ファッション領域で活躍するフォトグラファーMasato Kawamura氏を起用。店構えから、商品一点一点、オンラインまで、受ける印象の統一を図り、来店・体験への期待感を高めました。