Story

梓設計

自分たちの考えを発信する、新たな場がもたらしたもの。

梓設計の空港デザインユニット「AZS AVIATION」は、設計の実績やメンバーの紹介にとどまらず、個人の考え方や活動の背景までを語るページを公開しました。このプロジェクトを立ち上げ、牽引する梓設計・空港イノベーションラボの清水将矢さんと、メディアサイトのグランドデザインを手がけたDynamite Brothers Syndicate(以下DBS)のアートディレクター細野隆博に、制作の舞台裏を聞きました。

Project Info.
  • CLIENT: 梓設計
  • YEAR: 2026
SPEAKER
  • 清水 将矢梓設計
  • 細野 隆博Dynamite Brothers Syndicate

ポートフォリオだけでは伝わらないことがある

Q 今回のプロジェクトがスタートしたきっかけは?

清水:当初はホームページという話ではありませんでしたね。まずは、梓設計のAZS AVIATIONのブランディングを細野さんと一緒に進めていきたい、というところから始まりました。

細野:最初はそうでしたね。声をかけていただいたときは、AVIATION全体を統合するビジョンを作らないと、というお話でした。

清水:当時は、「こういう空港を作ろう」というコンセプトやビジョンがないことが課題でした。周りからは「空港の梓設計」と言っていただいて歴史や実績を積み上げてきましたが、個人の力に支えられてきた組織で、一人ひとりの設計者としての強さが梓の強みでもありました。ただ、その個の力を束ねる共通の哲学やビジョンが言語化されていませんでした。お客様に寄り添う姿勢は梓設計の文化として根づいています。その一方で、「自分たちはこうありたい」という主体的な思いを表に出す機会は、これまであまり多くなかったかもしれません。

細野:僕らが1冊まるごとデザインした、建築誌「新建築」の梓設計75周年記念号で、「未来の空港 /FUTURE AIRPORT」というキーワードが登場しましたね。その後に制作したAZS AVIATIONのパンフレットでは、もう一段踏み込んで「EMOTIONAL AIRPORT」という明確なコンセプトが語られています。以前から梓設計さんとお付き合いがありましたけど、その頃から……なんか上からっぽくなっちゃいますけど……。

清水:どうぞ。

細野:どんどんイケてる会社になってきたと思います!

清水:ありがとうございます(笑)。

細野:最近、新卒で入社したデザイナーが「梓設計の仕事をしたいです」と言っていました。そういう、設計事務所と普段ゆかりのない人たちにも興味を持ってもらえるのは、それまでの成果が出たんじゃないかと思います。



Q そこから、なぜ今回のようなサイトが生まれたんでしょうか?

細野:DBSからの提案ですね。僕は梓設計さんのホームページを勝手に「パトロール」しているんですが、AVIATIONのページがしばらく準備中だったんです。それを見て、「困ってるのかな」と思って連絡しました。あとは、それまで深く関わっているのに、もし自分じゃない人に制作を依頼されたらイヤだなと思って(笑)。

じつは、最初はメディアサイトにしようとは考えていませんでした。以前デザインしたパンフレットは、ポップなイラストを使ってEMOTIONAL AIRPORTの考え方を伝えるパートと、きれいな写真集的なパートの2つの軸があったので、ホームページも、カルチャー感とポートフォリオ感の2つの軸を提案したんです。

でも、その場で出たのは「ポートフォリオサイトより、自分たちの考え方を伝えていくものにしたい」というお話でした。それでメディアサイトを提案しましたね。さっき清水さんが「個人の集まり」というお話をしていましたが、たとえば、空港の椅子一つにしてもすごくマニアックな選び方をしていると思うし、いろんなプロフェッショナルがAVIATIONに集まっているので、そういう人たちの記事を読めたら面白いなと思ったんです。実績は梓設計本体のホームページに掲載されるから、そこと重複してもしょうがないですし。

清水:その提案は、すごくしっくりきましたね。パンフレットを作ったときは、物理的なメディアを手元に置けるようにという課題があって、作品を掲載しました。それはそれで納得感があったんですけど、基本的には自分たちの知っている範囲に配るし、展示場で渡す際にも伝えられる情報が限られるんですよね。それだけでは僕らの思想が伝わらないので、WEBコンテンツは必要だという思いがありました。
そんな中のご提案だったので、ぜひやりたいなと。細野さんたちのメルマガ(Dynamite Letter)を毎回見ていたので、それもメディアサイトを作ろうと決めた理由の一つかもしれませんね。

議論の積み上げから生まれた、発信への意欲

Q メディアサイトという形式は順調にスタートできたのでしょうか?

清水:実際は、続けることの難しさがやっぱりあります。設計者が忙しくて、書くのが難しい状況です。ただ、構想があっても黙っていたらできないので、担当は僕がやりますので、と言いました。周りを巻き込むには、そこはもう言うしかないですよね。
毎週、空港イノベーションラボという新しい部署の打ち合わせで企画を出しています。空港設計に関わるメンバーは社内にとても多いので、その一人ひとりに光が当たるような企画を考えています。

細野:長年ご一緒して思うのは、皆さんモチベーションが高いプロフェッショナルなんですよね。だから、仕組みというか、プラットフォームを作れば実現できるだろうなと信じていました。実際、毎回クオリティの高い記事で驚いています。個人的には、ボツ案の特集とかも見てみたいんですけどね(笑)。空港の設計では難しいと思いますけど。

清水:お客様がいらっしゃるので、公にできないことはありますね。でも、秘匿性を意識しすぎると、表層的な情報にとどまってしまって、プロの方が見たときに物足りなさを感じられてしまう。だからといって思想に寄せすぎると今度は抽象的になりすぎてしまうので、そのバランスは難しいですね。

Q 難しさがありながらも立ち上げて、継続できている原動力は?

清水:昔から「空港の梓設計」として知られていますが、その印象をもっとアップデートしていきたい思いで、僕も、一緒に活動しているメンバーも続けていると思います。

でも、もし6〜7年前に今回の提案をされても、実現できなかったかもしれません。パンフレットを一緒に作る機会があって、 75周年のプロジェクトも一緒に作り上げて、そのプロセスで、「未来の空港とは?」とか「新しい空港とは?」という議論が生まれました。それが積み重なってきて、「僕らもいろんな考えが出てきたから、それを発信しよう」という気持ちになったんです。
発信するたびに考え方が整理されて、その大事さを感じられたから、今、続けているのかもしれませんね。

細野:発信する大事さはわかります。僕らは、ある産学連携のプロジェクトの対外的なコミュニケーションをお手伝いしているんですが、専門的で理解されにくい共同研究の価値をわかりやすく伝えることで、そのプロジェクト自体の存在意義が増していると思っています。
もっと身近な例で言うと、さっきDBSのメルマガの話がありましたが、定期的に続けることで自分たちはどういう存在か考えるきっかけになるし、配信後の反応を見ると、どんなことを期待されているかわかりますからね。

Q サイトのクリエイティブについてはいかがですか?

清水:僕らはDBSさんの今や「ファン」なんですよ。完全にファンですし、メルマガのブログも見るし、ホームページも覗いています。特に細野さんには、デザイン面での圧倒的な信頼感がありますね。最初の頃は、細野さんのデザインを、三角スケールで測っていたくらいです。

細野:そうそう。僕がロゴをプレゼンしているときに、一生懸命測っていましたよね!

清水:「これはなんでこんなにかっこいいんだろう?」と思って、頑張って分析していたんですけど、それも当然もう辞めました(笑)。複数案あって、ストーリーもあって、しかもそれぞれが全然違うのに全部いい印象で。だから、僕らがDBSさんと組むときは、デザイナーということを一瞬忘れて、「こうありたい、こうやりたい」という思いをただぶつけることに集中できるのがすごくありがたいです。社内で話していても、DBSさんと仕事したい人はいっぱいいますよ。

細野:本当にありがたいです! 梓設計の皆さんとは、好きなことが近いんだろうなと思いますね。僕がそもそも空港が好きだし、建築士じゃないのに建築の本も見ていましたからね。

未来の空港を語るプラットフォームに

Q 公開後に変化はありましたか?

清水:まだまだ道半ばですけど、確実に変わってきていると思います。空港関係者の方から「記事見ましたよ」と声をかけられます。あとは、自信を持って公開できる内容なので、社内の意識がすごく高まっていると思います。まんべんなくメンバーに記事を書いてもらっているから、自分ごとに捉えているメンバーも増えてきましたね。メールの署名欄に、そのページのURLを入れるようにもなりました。

細野:元々意識の高い人たちだと思っていましたけど、今まで以上に、ですか?

清水:今までは、設計が一区切りついたら次のプロジェクトにシームレスに移るんですけど、終わったプロジェクトを振り返る時間を作れていませんでした。もちろん、後で告知する場合はありますが、それをストーリーにまとめることはしていなかったんですね。どこかで共有する機会があったとしても、個人の苦労した話とかチャレンジした話は残らないんですよね。
自分のプロジェクトを振り返って、思考を整理して発信するところまでセットにすると、ノウハウが次につながっていくと感じていて、今回それをできる場ができたのは良かったと思います。

Q 今後の予定を教えてください

細野:建築の設計も施工も、長いプロジェクトですよね。その間にいろいろあると思うので、それが積み上がってきたら、すごく深みのあるプラットフォームになると思いますよ。

清水:そうですね。梓設計の「AZS AVIATION」というのはチーム名ですけど、それ自体が、未来の空港を語るプラットフォームになるといいと思っています。プロジェクトに日が当たるような企画を始めたいし、個人の思想を発信したり、その横で異業種の方と対談や議論をしていたり、そういうコンテンツがどんどんつながっていくメディアにしていきたいですね。

細野:カチッとした記事も好きですけど、たまには変わった記事もあってほしいですね(笑)。空港のための音楽とか、空港のおすすめゴハンとか。それも「EMOTIONAL AIRPORT」の範囲かなと。

清水:そういうのも増やしていけるといいですね。今、まさにこの対談を撮影していただいてますけど、フォトグラファーの方との対談とかもアリかもしれませんね。





PHOTOGRAPHER:Shintaro Yoshimatsu

SPEAKER

清水 将矢

梓設計

細野 隆博

Dynamite Brothers Syndicate

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