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“社会的にいいこと”は、どうすれば聞いてもらえるのか?

コミュニケーション SNS SDGs

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2026.10.1

正しいことを言っているのに、届かない。

正しいことが届かない。そんなことは、コミュニケーションの仕事をしていると(もちろん日常でも)、

よくあることなのかもしれません。

私自身、仕事とは別に、知人と「共生(心地よさ)」をテーマにしたPodcastを企画・運営しています。

専門家へインタビューした内容をPodcastで配信し、

その内容をより多くの人に知ってもらうため、Instagramも運営しています。

▼共生を深掘りするためのインタビュー テーマ
建築、アート、環境、女性の生き方、平和、障がい者福祉など
「共生」「心地よさ」という言葉から連想されるさまざなこと

関心のない人に、どうやって振り向いてもらうのか。

Podcast全体のテーマは「共生(心地よさ)」。

それに準じたInstagramの投稿も、いわゆる“社会的にいいこと”です。

ただ、社会的にいいことは、多くの人が興味を持ってくれるわけではありません。

むしろ、真正面から正論を言われると、「わかってる」「はい、そうですね」で終わってしまいます。

 

聞いてもらえるかは、発信側の表現によってかなり変化があり、実際にInstagramの投稿は、閲覧数にかなりばらつきがあります。

投稿している内容は、大別すると以下4つ。

1、Podcastの番組告知
2、ゲストが話してくれた印象的な言葉
3、「心地いい社会とは?」という、ゲスト全員に聞いているQ&A
4、ゲストの専門テーマを、より深く知るためのコンテンツ

このうち、上記3つは、比較的よく見てもらえます。

これは、ゲストと共同投稿させてもらえることが多く、

ゲスト自身の話がおもしろかったり、ゲストのフォロワーが見てくれたりするからです。

一方で、運営側が考えたその月のテーマを深掘りする投稿は、反応にかなりばらつきがあります。

今回は、なかでも反応のよかった2026年8月の「平和」をテーマにした投稿を振り返り

どうやったら聞いてもらえるのかを考えます。

Instagramで15万以上に閲覧された、戦争の記憶。

ひとつ目の投稿は、閲覧数155,738回。

いいね2,000、プロフィールへのアクセス1,288、フォロー221、リポスト333、保存388。

フォロワー10万人を超えるアクティビスト・eriさんをはじめ、多くの方がリポストしてくださったこともあり、

閲覧数が大きく伸び、一時はInstagramの「検索・発見」でトップになりました。

投稿したのは、今年100歳になった祖父(長崎在住)に聞いた戦争の話。

ただ、祖父に「戦争のことを教えて」と聞いたわけではなく、

「100年生きるとは、どういうことだったのか。祖父に聞いてほしい」と、

長崎で暮らす高齢の方に多数インタビューしてきた知人のライターに依頼。

祖父の人生に関する年表や補足資料を渡して、インタビューを実施しました。

戦争体験者にとって、戦争は人生の一部ということを重視して

戦争についてダイレクトに聞くインタビューではなく、100年の人生のなかにある

戦争の記憶を教えてもらうような建て付けにしており、

祖父があらかじめ戦争について語る準備をせずに、ひとりの人生の記憶から

リアリティのある言葉が引き出せるように工夫しました。

インタビュー後、祖父から出てきた言葉を20のワードにまとめ、

社会・報道・徴兵・食という4つのカテゴリーに分けて投稿。

「※一個人の記憶として、読んでいただけると幸いです」という注釈も添えています。

また、身内が直接聞くと話してくれないこともあると考えて、

より自然な形で話してもらえるように知人ライターに、インタビューを依頼しています。

 

ここで効いていたのは、戦争という大きな社会問題ではなく、

祖父と孫という、とても小さな関係性だったのではないかと思います。

社会の話をしているのに、入口はあくまでだれかの祖父のストーリー。

それによって、教科書に載っている歴史の話ではなく

見る人自身の祖父母や家族、あるいは自分の人生に重ねて想像ができ、

社会的なテーマが、個人的な物語に引きつけられたのが、

ひとつのポイントだったのではないかと考えています。

この方法で制作した、社会・報道・徴兵・食の4カテゴリーすべてで、

多くの閲覧者を獲得することができました。

周知の事実を、まったく新しい視点で捉え直す。

別の観点から制作して反応がよかったのが、原爆とウラン採掘についての投稿です。

きっかけは、2025年夏に広島を訪れたとき、あるギャラリーで知った事実でした。

私は長崎出身で、小・中学校では長崎に原爆が投下された8月9日が登校日。

被害者視点から、原爆についての恐ろしさを何度も学んできました。

ですが、原爆の原料となったウランの採掘については、ほとんど知りませんでした。

在廊していた広島出身のギャラリストの方も、

広島に原爆が投下された8月6日の登校日に平和教育を受けてきたそうですが、同様の感想を持っていました。

何度も繰り返し聞いてきた戦争の話のなかに、知らなかった事実がある。

その意外性が、投稿を見るきっかけになったのではないかと思います。

SNS時代でも、強力な3つの要素。

今回の2つの投稿を振り返ってみると、

タイミング。驚き。共感。

 

この3つが、人の関心を引く大きな要素になっているように感じます。

広告業界では以前から、「人に振り向いてもらうには、驚きと共感が大切」といわれてきました。

SNSが当たり前の社会となり、情報量が爆発的に増えた今でも、

結局、人の目を引き、心に残るものは大きく変わらないのかもしれません。

 

そして、今回あらためて感じたのが、社会を語るときほど、個人的な話が強いということです。

大きな社会課題を、そのまま大きな言葉で語るのではなく

ひとりの人の生活、体験、個人的な気づきや感情にまで落としてみると、

読む人の理解や納得、腑に落ちる感覚につながっていくのだと思います。

いってみれば、理屈ではなく、体が反応するような人間の普遍的な感情に立ち返ることが

伝える際の大きなヒントになるのではないでしょうか。

ブランドでも、「何をいうか」よりも「誰の」「どんなストーリーでやっているか」の方が

重視されやすい流れにあると感じています。

物語は強い。だからこそ、注意も必要。

今回、もうひとつ気になったことがあります。

2026年、沖縄戦をめぐって森恵子という22歳の教師が、

30人の生徒に集団自決をさせることを拒み、生徒たちを救ったという物語がSNS上で拡散されました。

ですが、この人物や出来事について史実を裏付ける資料が確認されておらず、

AI生成とみられる画像とともに海外から日本へ拡散したフェイクナラティブとして調査されています。

これは、今回改めて認識した物語性の強さを、別の角度から考えさせられる出来事でした。

いってみれば、人が感動するポイントを逆算して、人の心を誘導させる物語をつくることもできるのです。

SNSで情報が広がりやすい時代だからこそ、人の関心を引くことと、正確に伝えることの両立は、

今後ますます重要なテーマになりそうです。

山口 明希子

COPYWRITER

言葉を軸に、企業の広告やキャンペーン、新商品や新施設の立ち上げ、自治体の広報・コミュニケーションなど幅広い領域を経験。ネーミング、コンセプト開発、伴走支援などを通じて、クライアントとひと・まち・社会のよりよい関係を模索している。共生をテーマにした著書『みんなが心地いい社会って、なんだろう』を刊行予定。
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