マーケティングの基本フレームワークとして、長く使われてきた「3C分析」。
Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの視点から勝ち筋を分析する手法だ。
顧客が求めていることは何か。
競合が提供できていないことは何か。
自社だから提供できることは何か。
バリュープロポジションを考えるうえでも、とてもシンプルで、使いやすい。
ただ、実際に3Cで考えていると、壁に当たることも多いのではないでしょうか。
競合を分析しても、似たような強みが並ぶ。
顧客ニーズを掘り下げても、競合も同じところを見ている。
自社の強みを整理しても、既存商品の延長線上からなかなか抜け出せない。特に昨今の国内ブランドは、その傾向が強いように感じる。
市場が成熟するほど、差別化できる余白は小さくなっていく。
そんなとき、3Cの分析をさらに深くする前に、ひとつ別の問いを置いてみてもいいのではないかと思う。
「そもそも、どの市場で戦うのか」だ。
従来の3Cは、「市場の中で、どこなら勝てるのか」を考えるのに、とても使いやすい。
一方で、3Cで考え始めるとき、無意識のうちに従来の市場を前提にしてしまうこともある。
たとえば腕時計について3C分析をするとする。
Competitorを考えれば、当然、他の腕時計ブランドが並んでくる。
でも、本当にそうだろうか。
ファッションとして考えれば、競合はバッグやスニーカーかもしれない。
自分へのご褒美なら、旅行かもしれない。
車の競合がアルコールになることだってある。
車とアルコールは、商品としてはまったく違う。
でも、車で出かけるならお酒は飲めない。お酒を飲むなら車には乗れない。
同じ時間に、どちらかしか選べない。カテゴリーは違っても、顧客にとっては競合になる。
競合とは、同じ商品を売っているブランドとは限らない。
どこで戦うかを変えると、競合が変わる。
競合が変われば、顧客も変わる。
そして、求められる価値も変わっていく。
市場をずらしてみると、同じ商品でもバリュープロポジションが変わって見える。
競合にどう勝つかを考える前に、どこで戦うのかを考えてみる。
そんな視点から、3Cを少しリニューアルしてみた。
Context / Core / Category。
いわば、「令和版の3C」だ。
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最初のCは、CustomerではなくContext。
特定の顧客を見る前に、その背景にある社会や生活の変化を見てみる。
働き方はどう変わったのか。
豊かさに対する価値観はどう変わったのか。
テクノロジーによって何が当たり前になったのか。
人々は何に時間やお金を使うようになったのか。
「顧客は何を求めているのか」だけではなく、
「なぜ今までとは違う価値が求められ始めているのか」から考えてみる。
Customerから考えるよりも少し視点を引くことで、まだ顧客になっていない人や、これから生まれる需要まで見えてくるかもしれない。
二つ目のCは、CompanyではなくCore。
現在の商品やサービスから少し離れて、自分たちの価値の源泉まで戻ってみる。
技術。歴史。専門知識。顧客との関係。ものづくりへの思想。長年培ってきた文化。
たとえば文具メーカーなら、そのCoreは「文房具をつくれること」だけではないかもしれない。
書くという行為への知見。
紙や素材を扱う技術。
手に触れるものを設計する力。
人の思考や記録を支えてきたノウハウ。
商品ではなく、その商品を生み出している“核”まで戻ってみる。
そうすると、今とは違う市場で生かせそうなものが見つかるかもしれない。
そして三つ目のCが、CompetitorではなくCategory。
ここでいうCategoryは、既存の商品カテゴリーというより、「自分たちを何の市場として捉え直すか」という意味で考えている。
このCoreは、どの市場なら違う価値を持つだろう。
そんなふうに考えてみる。
新しい価値をつくるというと、新しい技術や商品を生み出すことを想像しがちだ。
でも、すでに持っている技術や知見でも、市場をずらすことで意味が変わることがある。
比較される相手が変われば、評価されるポイントも変わる。顧客が変われば、求められるものも変わる。
新しいものをつくるだけではなく、今あるものが価値を持つ市場を探してみる。
そんな発想もあっていいのではないだろうか。
Context、Core、Category。
3つを並べてみると、従来の3Cとの使い分けも見えてくる。
令和の3Cでは、社会の変化と自分たちのCoreから、戦う市場を探してみる。
市場を発見する3C。
そして、「ここなら違う価値をつくれるかもしれない」という市場が見つかったら、従来の3Cで考えてみる。
Customer、Competitor、Company。
そこに本当に顧客はいるのか。
競合は誰になるのか。
自社はどんな価値を提供できるのか。
市場を攻略する3C。
令和の3Cで「どこで戦うか」を考えて、従来の3Cで「どう勝つか」を考える。
言い換えれば、市場をずらして仮説をつくり、従来の3Cで確かめてみる。
そんな使い方ができるかもしれない。
もちろん、こうしたことを感覚的に実践している人も多いと思う。
社会の変化を捉える。
自分たちのCoreまで戻る。
そして、その価値が生きそうな市場を探してみる。
それをContext、Core、Categoryという3つのCにしてみると、考え方が少し整理しやすくなる。
市場が成熟し、競合との差別化が難しくなったとき、競合をさらに細かく分析するのではなく、一度その市場から出てみる。
市場から少し離れてみると、今まで競合だと思っていなかったものが競合になる。
腕時計の競合が旅行になり、車の競合がアルコールになる。
そう考えてみると、自分たちが昔から持っていたものにも、まだ別の価値があるのかもしれない。
バリュープロポジションを考えるとは、新しい価値をつくることだけではない。
市場をずらすことで、今までとは違う価値を見つけることでもある。
New Perspective
市場をずらせば、価値は変わる。