パーパスに、ミッション、ビジョン、バリュー、さらにコンセプト。ブランディングには、さまざまな小難しい言葉が登場します。
「ミッションやビジョンはなんとなく想像できるけど、パーパスって何?」
「そんな面倒なこと、なんでわざわざ決めなきゃいけないの?」
そう思う人におすすめなのが、「旅行」に置き換える方法です。
これなら、言葉の意味がわからず最初からあきらめてしまったり、曖昧なままブランドづくりを進めたりすることはなくなるでしょう。
目次
人は旅行を計画するとき、たいてい目的を決めます。言葉にしなくても無意識のうちに決めているものです。
たとえば、観光、温泉、グルメ、帰省、視察、聖地巡礼、自分探し、一攫千金など。
なんのために旅行に出かけるのか自覚し、それを同行者に伝えることは、なんのためにブランドが社会に存在するのか(パーパス)をプロジェクトメンバーに伝えることと同じです。
もし共有しなかったら、それは黙って人を旅に誘い、連れ回しているのと変わりありません。
パーパスだからといってかしこまらず、旅行での「○○を見たいから」「○○で遊ぶため」のように、純粋な気持ちをそのまま言葉にしてみましょう。
たとえば、旅行の目的を「温泉に癒されるため」と決めたら、目的地は温泉地になります。「童話に登場するような古城を訪れたいから」とすれば、フランスやドイツなどが候補地にあがるでしょう。
同じようにパーパスから、ブランドが目指すゴール(ビジョン)を導き出せます。コツは「当たり前になっている未来」を想像すること。
仮にパーパスが「地球温暖化を止めるため」なら、ビジョンは、地球温暖化が止まっているのが当たり前の未来、つまり「地球で快適に暮らしている明日」と設定できます。(実際はもっと具体的なほうがベターですが)
ゴールを定めることは、多くのメンバーが関わるブランディングでは重要です。
ミッションとは、目的達成のためになすべきこと。旅行に例えると、「温泉」が目的ならどこに泊まって何を食べるか、「古城」ならいつ出発して現地までどう移動するかといったスケジュールです。
ブランディングでは、詳細なタスクを別で用意しますが、「で?実際どうするの?」とメンバーを困惑させないためにも、ミッションは欠かせません。
ポイントは、挙げはじめたらキリがないので、目的達成のために本当に必要な行動を1つだけ決めること。確実に通過しなければいけないチェックポイントを設けると考えてもわかりやすいかもしれません。
バリューとは価値ですが、旅行に置き換えると、旅行者の強みや個性です。
予算が豊富、車を所有している、英語を話せる、アウトドアに強い、一人でどこでも行ける、現地の最新情報に詳しいなど。
旅行の目的や目的地が同じAさんとBさんでも、二人の強みや個性が違えば、旅行のスタイルは変わります。
同様にブランディングも、バリューの内容次第では、ミッションの軌道修正が必要な場合もあり、後述するコンセプトにも影響します。
価値=上質なことでなければいけないと思い込みやすく、当事者では強みに気づきにくいものです。気負わずに、まずは特徴を洗い出してみましょう。
コンセプトの定義はいろいろありますが、ざっくり言えば、どんな体験を提供するか、その方針を言語化したもの。理解していなければ、メンバー各自が見当はずれなアイデアやプランを用意してしまいます。
ここまで例に挙げてきた「温泉」では次の通りです。
旅行の目的(パーパス):温泉でゆっくりしたいから
旅行の目的地(ビジョン):混んでない、由緒ある温泉地
旅行の行程(ミッション):詰め込みすぎずにゆとりをもつ
旅行者の強み(バリュー):日程に余裕がある
旅行で得る体験(コンセプト):???
旅行者が得るのは、くつろぎなので、この旅行のコンセプトは「くつろぎの温泉旅」になります。もし旅行中に自分を見つめ直すことができるなら、コンセプトは「自分再発見の温泉旅」になります。この整理はブランディングにも応用できます。
パーパスやビジョンと重複する場合もあるケースもありますが、コンセプトは企画やデザインに反映されるものなので、そもそもコンセプト自体が新しく魅力的か、今後展開しやすいかどうか、という視点も大切です。
伝えたいことはあるのに言語化できない!そんなときは、この構文に当てはめると、伝えたいことの輪郭がひとまず浮かび上がります。ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
This is New Perspective
小難しいパーパスなどは「旅行」に置き換えるとわかりやすくなる!
ほかにも料理やスポーツ、ゲームなど身近な事柄に置き換えられるかもしれません。まずは自分なりに言語化してみましょう。
石塚 勢二
COPYWRITER
広告制作会社で多くの企業の広告、プロモーションに携わった後、入社。コピーライティングに限らず大局的な視点に立ち、ブランドのコンセプト開発からコミュニケーション戦略の立案、動画・音声コンテンツの企画・シナリオ設計まで行う。