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キャッシュレスでレスするのは現金だけじゃない。決済の新しいUXとは?

COLUMN

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2025.3.20

キャッシュレス化の最新事情

2月9日にトランプ大統領は、1セント硬貨の製造に2セント以上かかるため、新たな製造を辞める考えを明らかにしました。
この流れを受け、日本でも1円玉廃止がSNSで議論に。(ちなみに1円玉の製造には約3円かかるそうです…)

皆さんは日頃、1円玉を使っていますか? 硬貨や紙幣を手にする機会は以前より減ったのではないでしょうか。
最近はお年玉、お賽銭、冠婚葬祭、給食費の支払いもキャッシュレス化。
あの人生ゲームも、2008年発売の「人生ゲームICルーレット」からすでにキャッシュレスを採用していました。(わりと早い!)

日本のキャッシュレス決済比率は現在約40%ですが、2030年には50%に達するといわれ、この流れは加速するでしょう。(それでも90%以上の韓国、80%以上の中国に比べるとまだまだ低いですが)

キャッシュレス化の思わぬ影響

キャッシュレス決済には多くのメリットがある一方、デメリットもあります。今回は、ほかであまり語られていない影響に迫ります。

それはズバリ、利便性を追求するあまり、現金に対する実感や、お金にまつわる心の機微が薄れてしまうことです。

たとえば、3COINS。
100円硬貨わずか3枚から購入できるのが一目瞭然の店名です。しかしキャッシュレスがさらに一般化してコインのイメージが希薄になれば、「わずか3枚」のリーズナブルな印象や、ささやかな喜びは希薄になるでしょう。
「1コインでお釣りがくる」というフレーズはお得感を伝える常套句でしたが、それも死語になるかもしれません。

お金の重みも変化する?

エンタテイメントの世界では頻繁に札束が登場します。リアリティショーでは賞金として山積みにされたり、犯罪映画ではアタッシュケースに入っていたり。紙幣の雨の中、紙幣の風呂に入るのも定番シーンです。
札束は大金の象徴で、大儲けした事実がわかりやすいため重宝されてきましたが、キャッシュレス時代ではそんなシーンが見られなくなるかもしれません。

札束だけではありません。ドラマ「北の国から ’87初恋」のラストシーンでは、泥のついた1万円札が登場しました。
この紙幣は、親の苦労や子どもへの愛情を伝えるキーアイテムですが、キャッシュレスで果たしてその切なさが伝わるでしょうか。

また、「100円玉を握りしめて駄菓子屋へ」という日本の原風景も、近い将来失われるでしょう。そのとき、硬貨をぎゅっと握りしめていたときと同じ気持ちで、子どもたちは駄菓子をキャッシュレス決済するでしょうか。

お金を入手し、所有し、使用する際の、言葉にするほどでもない繊細な感情。それは、形があり、視覚・聴覚・触覚を刺激する現金特有のものといえます。

決済の新しいUXとは?

UXとはUser Experience。ユーザーが商品やサービスから得られる体験を意味します。

キャッシュレス決済の新しいUX。それは、現金に対する実感を通じて、言葉にするほどでもない繊細な感情を引き出し、心の機微を感じられるようにすることではないかと考えます。

宝くじをネット購入し、当選確認する際、結果はすぐに表示されません。読み込みの関係かもしれませんが、1枚ずつ時間をかけて表示されます。そのちょっとした「タメ」がドキドキの演出に一役買っています。
キャッシュレス決済でも同様の演出ができるはずです。

 

決済の新UX❶ 決済音が金額によって変化

現在、サービスごとに異なる決済音。その音程が金額の大小で変わるというもの。クレジットカード決済でも導入できますが、スマホの場合はチャージ時も反映され、画面表示や、手に伝わる振動が変化するという方法も考えられます。これにより、頑張ってお金を手に入れた感、満を辞して買い物をしたときの使った感をより実感できると思われます。

 

決済の新UX❷ 小銭を使い切ったスッキリ感を再現

財布から小銭がなくなったとき、ほんの少しだけうれしい気持ちになるものです。その感覚をキャッシュレスでも再現できたら。たとえば残高がキリのいい数字になると、通常とは違う決済音や画面表示が出るなど。

 

決済の新UX❸ ゾロ目の支払いで特典付与

これも買い物あるあるから。支払い時に777円や11,111円などゾロ目になったときの小さな幸せをキャッシュレスでも取りこぼさず、お祝いに特典をもらえたら、買い物はもっと楽しくなるはず。

 

決済の新UX❹ 紙幣の人物を身近な存在に

これまで1万円札を「諭吉」と呼ぶ人がいました。そう呼ぶことで紙幣との距離が縮まり、愛着が増し、額面以上の価値が生まれたと思います。もし新紙幣の「栄一」を身近に感じる仕組みがあれば、ふれあいのないキャッシュレス決済でも温かみを感じられるかもしれません。

必要不可欠ではないけれど

以上の内容は、決済において必要不可欠ではありません。なくても困らないどころか、人によっては煩わしさすら感じるかもしれません。
しかし、そうした一見ムダとも思える遊びの要素があると(必要とする人が選べるようになると)、お金を稼いだり、もらったり、貯めたり、使ったりする行為はふくよかになります。そうした体験から、お金に関するその時々のシーンが記憶に残りやすくなるのではないでしょうか。

かく言う私もほぼ100%キャッシュレス派で、利便性を享受していますが、決済時のあっけなさ(特に少し大きな買い物をしたときの)に「なんだかなぁ」とモヤってる今日この頃です。

 

This is New Perspective
キャッシュレスで、お金にまつわる心の機微も薄れかねない。
今後は実感が伴うUXが求められるかもしれない。

石塚 勢二

COPYWRITER

広告制作会社で多くの企業の広告、プロモーションに携わった後、入社。コピーライティングに限らず大局的な視点に立ち、ブランドのコンセプト開発からコミュニケーション戦略の立案、動画・音声コンテンツの企画・シナリオ設計まで行う。

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