Blog

#BRANDING

沈黙がつくったブランド。サンタクロース。

316View
2025.12.12

冬になると、街の明かりがやわらかくにじんで見える。視力の弱い筆者は、街でイルミネーションを見つけると、メガネを外して輪郭のないぼやけた光を楽しむ習慣がある。
そんなボヤボヤな12月が近づくと、思い出す存在がいる。赤い服に白いひげ、大きな袋。サンタクロースだ。世界で最も知られた人物なのに、普段は姿を見せない。それでも、気づけば毎年この季節に、そっと心の中に帰ってくる。

興味深いのは、サンタが自らを語らないことだ。サンタは大きな声で「ここにいるよ」と主張しない。はっきりとした証拠があるわけでもない。それでも人々は、幼い頃に感じたあの“気配”を、どこかで手放さずにいる。明確な情報が少ないほど、それぞれの記憶が余白を補い、受け取る側の物語が更新されていくからだ。“言い切らない”存在のほうが印象に残ることは、実際によくある。

そして、サンタは驚くほど少ない要素でイメージを築き上げてきた。赤い服、白いひげ、大きな袋。どこで聞いても同じサンタが思い浮かぶのは、姿形だけではなく、彼らしい“気配”まで受け継がれてきたからだろう。ことばよりも、「たぶんこんな感じ」という感覚のほうが、人の中に残りやすいこともある。

また、サンタは子どものためだけの存在ではない。大人にとっても、個々の経験や記憶と結びつき、思い出の入り口になることがある。その背景には、時代や年齢を問わず続いてきた、“誰かを喜ばせたい”という気持ちがある。サンタはそれを象徴する存在だ。

一年に一度という距離感も、サンタを特別視させる要因になっている。どこかでその存在を信じたいと願う心の中に、サンタの気配は毎年のように自然に戻ってくる。

サンタの気配が長く続くのは、語られすぎないことが理由なのかもしれない。余白があるから、人はそこに自分の記憶を重ねられる。その在り方は、ブランディングにおいても示唆を与えてくれる。

 

植村 徹

PRODUCER / PLANNER

クリエイティブエージェンシーでCI/VI、ブランディング、TVCM、Web施策などを経験。デザインシンキングや編集思考を用いたワークショップやファシリテーションを得意とし、百貨店の売り場開発、ライフスタイル商材のブランドコンセプト開発などを行っている。

  • HOME
  • Blog
  • 沈黙がつくったブランド。サンタクロース。

HPに掲載していない作品事例はこちら

Design Case Study

Download

News Letter

News
Letter