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人智を超えるシンギュラリティに対策はとれるか?

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2026.2.14

そもそもシンギュラリティとは?

ざっくり言うと、AIが人類の知能を超える未来のこと。

もう少し詳しく言うと、自律的なAI(人工知能)が自己進化し続けることで人類の知能を超え、社会に急激な変化をもたらすとされる転換点のこと。日本語では「技術的特異点」と呼ばれています。

「人類の知能を超える」、ここ重要です。

元々は、米国の未来学者でAI研究の世界的権威、レイ・カーツワイル氏が提唱した仮説。彼は、コンピューターの計算能力が指数関数的に向上しているのを指摘し、やがてAIが人類の知能を凌駕する時点(Singularity)が来ると、2005年の著書「The Singularity Is Near」で予測しました。

というのが通説ですが、じつはその前から機械が人間を超えるという予測はありました。

1965年、英国の数学者アーヴィング・ジョン・グッド氏は、「最も賢い人間のあらゆる知的能力をはるかにしのぐ能力を持った機械」を「超知能マシン」と表現し、それがいずれ出現すると説きました。

1993年には、米国のコンピューター科学者でSF作家のヴァーナー・シュテファン・ヴィンジ氏が、著書「The Coming Technological Singularity(技術的特異点)」で、知能爆発を起こす要素として、1 人工知能の発展、2 コンピュータネットワークの発展、3 コンピュータと人間のより親密なインタフェース、4 生物科学の発展、という4つの科学的ブレイクスルーが必要だと考えました。

昨今のAI市場の急成長でにわかに注目を浴びたシンギュラリティですが、その考え方自体は半世紀以上前から存在していたのです。

出典:Nomura Research Institute, Ltd.

シンギュラリティの時期はいつ?

では、そのシンギュラリティはいつ訪れるのか。時期については諸説あります。

【2045年説】

カーツワイル氏は先述の著書で、計算能力の向上速度やAI研究の進展速度から2045年と予測。これによりシンギュラリティは「2045年問題」と知られています。

【2040年説】

英国の未来学者スチュアート・アームストロング氏は、2012年の「シンギュラリティ・サミット」で調査結果を発表。有識者の間で実現年の中央値が2040年であることを明らかにしました。

【2030年説】

神戸大学名誉教授の松田卓也氏や、電子物理学者の斎藤元章氏が提唱。シンギュラリティが訪れる前の「プレ・シンギュラリティ」とも呼ばれ、貨幣がなくなる、エネルギー問題や食糧問題が解決する、戦争や紛争がなくなるといわれています。

【2023年以前説=すでに起きている】

ヴァーナー・シュテファン・ヴィンジ氏は先述の著書で、「30年以内(2023年まで)に人類は超人間的知性を創造する方法を生み出し、人類の時代は終わりを迎える」と記しています。

【シンギュラリティは到来しない説】

スタンフォード大学のジェリー・カプラン教授は、AIの能力はあくまで人類のためにあると主張。AI 研究の世界的権威のため、シンギュラリティの議論に大きな影響を与えました。

ただいまシンギュラリティ中

どの説にも説得力がありますが、私は「すでに起きている説」を支持します。

AIが人類の知能を超える「技術的特異点」と聞くと、歴史上のある一点をイメージしがちです。なぜなら、そのほうがエポックメイキングでドラマチックだから。

しかし、カーツワイル氏がシンギュラリティを唱えた根拠の一つ「ムーアの法則※」が指数関数的であるように、技術の発展とは、その後急激に変化するとはいえ、途中まではきわめて緩やかな曲線的なもの。そのため、毎日使っているAIがいつのまにか人類を超えていた、というのが現実ではないでしょうか。 ※半導体の集積率が18か月で2倍になるという経験則

情報革命を例に挙げるとわかりやすいかもしれません。人類は歴史上、農業革命、産業革命、情報革命と3つの大きな革命を経験してきました。AI、シンギュラリティも情報革命の延長線上にあるといえます。

それぞれの革命は、複合的な要因によって起こりました。農業革命の場合、農法の普及や畜産の技術向上など。産業革命の場合、綿工業の技術革新や蒸気機関の導入など。そして情報革命の場合も、通信インフラの発展、コンピュータの小型化・高性能化、スマホの普及など要因はさまざま。なかにはWindows95の発売を指摘する人もいますが、それもほんの一例に過ぎません。私たちは、気づかぬうちに情報化の波にのまれていったといえるでしょう。

同じことがAIについてもいえるのではないでしょうか。将棋やチェスでAIが人類に勝ったニュースも、ChatGPTの一般化も、数ある通過点の一つだと考えます。

(余談ですが、カフェで隣に座っていた主婦たちが「うちの娘なんて進路相談までチャッピーにしてるのよ! と嘆いていました)

東京工科大学コンピュータサイエンス学部の中西崇文教授も、著書の中で次のように記しています。

「機械は連続的に進化して徐々に人間を超えていくのであり、ある瞬間に突然、人間を超える機械が誕生するわけではないのだ。シンギュラリティとは特別な時点に起こるできごとではなく、次々と重ねられる技術的進展によって連続的に起こるものであり、我々は今、その真っ只中にいるのである。」

賛否が分かれるシンギュラリティ

シンギュラリティの到来について、識者の間では推進派・否定派・慎重派に分かれます。

1. 推進派

カーツワイル氏をはじめとする推進派は、AIで人類は多大な恩恵を受けると主張し、シンギュラリティ後の世界にユートピアを予想します。

2. 否定派

否定派はAIが暴走する危険性を指摘し、人類が滅亡させられる可能性があると警鐘を鳴らします。AI開発でCO2排出量が増加する課題も近年では指摘されています。

▶︎スティーブン・ホーキング(科学者)

「完全な人工知能を開発できたら、それは人類の終焉を意味するかもしれない」

▶︎イーロン・マスク(スペースX)

「潜在的に、核兵器より危険。人工知能によって、私たちは悪魔を呼び出している」

▶︎ビル・ゲイツ(マイクロソフト)

「なぜ人々が人工知能の恐怖について考えないのか理解できない」

3. 慎重派

危険性を訴えながらも、「危険性を十分に認識し、必要な対策を行ったうえで迎えるのであればそれでもよい」と考えるのが慎重派です。

▶︎ジェイムズ・バラット氏(ジャーナリスト)

「人工知能 人類最悪にして最後の発明」の著者であり、米タイム誌が選ぶ「AIによる人類滅亡論を唱える重要な識者5人」に選ばれた彼は、著書の中でAIの危険性と対策について詳細な検討を行っています。

▶︎ジャン・ガブリエル・ガナシア氏(哲学者)

著書「そろそろ、人工知能の真実を話そう」 では、起業家や投資家がシンギュラリティを加速しようとする現状自体が面白おかしいものだと疑念を示しています。

「情報産業やウェブ産業、通信産業の大企業が、大金を投じてシンギュラリティという仮説の信奉者を援助しているのである。これはなんとも皮肉な状況だと言えよう。これらの大企業は、自ら率先して情報技術の発展を推し進めているというのに、その情報技術こそが人間を破滅に追いやると自ら警告しているのだ。これではまるで〝放火魔の消防士〟ではないか。彼らは自分たちで望んで火をつけておきながら、その火を消すために先頭に立って奔走している

人類に欲望がある限り

これらを踏まえて私見を述べるなら、「否定しても意味がない」といったところです。

「人類の知能を超える」といっても、「知能」の定義も「超える」基準も曖昧なので過剰に反対しようがないのですが、それ以上に、人類の欲望が尽きないことが意見の根底にあります。

バイオテクノロジーから軍事兵器まで多方面に転用できるAIの開発競争は、今後も止まらないでしょう。その点でAIは、「もっと長生きしたい」、「もっと強くなりたい」、「もっと効率的にしたい」といった、人類の欲望の表れ、といえます。そのため、どんなに否定されても、人類に欲望がある限りAIは存在し、進化し続けるでしょう。

おそらく否定派は、AI自体を否定しているのではなく、AIの使用に関する議論が不十分なまま開発ばかり先行している社会に苦言を呈しているのはないでしょうか。であれば、あとは法整備次第です。

ハサミは文具にも凶器にもなりますが、正しい使い方やルールを共有することで社会に存在しています。人類が作り出したAIも、道具という意味では同じといえます。

ただし厄介なのは、AIにはハサミと違って知能があること。AI同士が知能を高め合い、シンギュラリティ以降は人類の理解、予測、想像を軽々と超えるのです。

そうして進化した先には何が待っているのでしょうか? その想像なくして規制も法整備もできません。

次回は、シンギュラリティの影響を予測し、私たち人類がとれる対策について考えます。

 

参考

「シンギュラリティはより近く: 人類がAIと融合するとき」(レイ・カーツワイル 著・高橋則明 訳/NHK出版)、「シンギュラリティは怖くない ちょっと落ちついて人工知能について考えよう」(中西崇文/草思社)、「人工超知能が人類を超える シンギュラリティその先にある未来」(台場時生/日本実業出版社)、「動物と機械から離れて AIが変える世界と人間の未来」(菅付雅信/新潮社)、「ロボットとシンギュラリティ」(木野仁/彩図社)、「シンギュラリティ」(神崎洋治/創元社)、「AIの壁」(養老孟司/PHP研究所)、「哲学の解剖図鑑」(小須田健/エクスナレッジ)、DIAMOND online 2026/2/7Pen Online 2026/2/7、朝日新聞 2026/2/6PreBell 2025/03/14GetNavi web 2025/3/4Ai Convo

石塚勢二

CREATIVE DIRECTOR / COPYWRITER

プロダクションにて企業の広告・プロモーションに携わった後、Dynamite Brothers Syndicateに参画。パーパス策定やコンセプト開発から、コミュニケーション戦略の立案、コンテンツの企画・制作まで行う。知性・感性が相手と共鳴する関係を重視。

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