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【場のデザイン】vol.2 価値観を変える平和教育「Peace Education Lab Nagasaki」に学ぶ、会議のデザイン

場づくり 平和 対話

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2026.8.27

意見が活発にでる会議、自分らしく過ごせる場、ちょっと息苦しく感じる空間など。その場の空気によって、気持ちや振る舞いが変わることはありませんか。その人らしく過ごせる場所は、一体何が違うのか。そのヒントを求めて、仕組みを含めた“場のデザイン”について考えるシリーズです。今回は、被爆地・長崎でビジネスパーソンや修学旅行生、外国人観光客を受け入れ、あらゆる方法で平和について伝える「Peace Education Lab Nagasaki」代表理事の林田光弘さんにアドバイスをいただきました。

Peace Education Lab Nagasakiとは?

被爆地での平和活動と聞くと、怖い、真面目などのイメージが浮かぶ方もいるかもしれませんが、「Peace Education Lab Nagasaki」はとても軽やか。そして、平和を非常に広義でとらえ、造詣が深い。代表理事の林田光弘さんは、2024年に被団協(日本原水爆被害者団体協議会)がノーベル平和賞を受賞した際に、被爆者とともに代表団の最年少メンバー(当時32歳)として授賞式に出席した方で、中学生の頃から被爆者の方と平和活動を続けています。

Peace Education Lab Nagasakiは、“被爆者なき世界”を懸念して地元長崎のセンパイである鳥巣智行さんと2022年に設立。活動の大きな柱は「平和を伝えること」と「平和を伝える人の育成」です。前者では、ゲームや広告づくり、未来のあたりまえを考えるワークなど、意外な切り口から平和について深めていきます。なかでも驚いたのが「Peaceful Leadership Camp」。ハラスメントやコンプライアンス違反の背景にある構造的暴力・文化的暴力を知り、すこやかな組織をつくるヒントを得る、企業向けの研修プログラムです。

後者の「平和を伝える人の育成」とは年間30万人の修学旅行生が訪れる長崎で、児童・生徒と年齢の近い長崎の大学生・若者がバディ(仲間)となって平和公園周辺を案内するもの。バディは研修後、晴れてPeace Buddyとなり、時給1,250円(2026年7月時点)をもらいながら働けるようになります。また、著名人による講義とワークを繰り返し、自らオリジナルのプロジェクトを立ち上げるまでを伴走支援する集中講座「Peace Academy」を年に一度開催しています。

場のスタンスを共有して、本題に集中しやすくする

さて、本題の会議デザインへ。広島・長崎の平和観光はインバウンドも多く、Peace Education Lab Nagasakiには2024年だけで11カ国の人が参加しています。国外の人に原爆投下について伝えるのは、相当配慮が必要。いきなり8月9日の話からはじめると、一切聞いてもらえないこともめずらしくないそうです。林田さんは中学3年生の頃から平和活動を続けており、話の冒頭で「Remember pearl harbor!」と非難されたこともあり、その後大学ではゼミを通じてアメリカやアジアなど原爆投下に関する各国のラナティブを学びました。この内容はPeace Buddyの研修にも組み込んでいます。

では、冒頭にどんな話をするのか。まず前提として核兵器は第二次世界大戦(アジア・太平洋戦争)で使われたものであり、その戦争において参加者の出身国における歴史認識について確認します。その上で、今日いっしょに学びたいのは、核兵器という今なお、世界最強の武器のこと。もし使われたら、人はどんなふうに死ぬのか、生き残った人たちはどんな辛い人生が待っているのか。街はどうなってしまうのか。それを事例として皆さんが知って、自分たちの街や国に置き換えて考えてもらう土台にしてほしい。さらに、核兵器を保有している国の人たちには、自国が何を持っているのかを改めて考えてみてほしい。いっしょにそういう時間を過ごせればとイントロダクションで話すようにしています。

さらに、このツアーはどちらが正しいのか。だれが正しいのか。そういうことを突き詰めるワークショップではなく、核兵器のリアリティをお互いに学び、立場の違いによって感じ方も違うのでそれについて言葉を交わし合うことが最大の目的です、とも。10〜15分ほどかけて、その場の位置づけや、自分たちのスタンスを表明しています。そうすると、最初は警戒していた方も、イントロダクションが終わる頃には表情がほぐれているそうです。

円が持つ、対話の力

さらに、林田さんが大切にしているのは、戦争や平和は政治家や外交官など知識豊富な人だけに発言権があるわけではなく、だれにでも発言権があるという考え方。そこで大事にしているのは、ツアーの対話の場の環境づくり。特に「円」になってワークやコミュニケーションを取ることを心がけています。平和公園のツアー時も修学旅行生や国内外の観光客のみんなで円になって話すようにしており、Buddy対参加者という構図ではなく、全員が全員に対して話し、聴き合う形をつくります。その際、円には上座も下座もなく、自分の隣の人の表情もわかるというメリットも。

また、円での対話の場をつくる際はディベートとダイアローグ(対話)の違いを意識してほしいということも話します。ディベートは勝ち負けや決断が必要な場面に向いています。ですが、すぐに結論を出す必要のない議題ではお互いの内面の変化が起こる対話の方が豊かな場に。序列や上下関係を感じにくく、参加者全員の表情が見え、当事者意識が芽生えやすい円になることで対等なコミュニケーションができることを身体的に感じさせてくれます。

そんな対話、そして円をつくることにこだわる林田さんたちは対話ためのスペース「VOICE」も運営されています。VOICEには大きな円卓とそれを囲む特大のO型ベンチを置いており、毎回、参加者全員で円をつくりコミュニケーションをとっています。

また、VOICEで対話の場を開く際必ずアナウンスするのは、場のグランドルール。このグランドルールは全国で対話活動を行う永井玲衣さんの手法を参考にしています。

例えば対立が起きそうなテーマの際は“傾聴”はマスト。とはいえ、「だれかが話しているときは最後まで聞く」というルールではなかなか守るのが難しい。そこで活躍するのが、ペンギンやクマのぬいぐるみです。「可愛いものを持っているときは、途中で遮らずに聞いてください」というルールにすると、聞き手はついつい遮りたくなる衝動を抑えて最後まで話を聞くようになり、話し手も自分の意見だけでなく、その背景までしっかり伝えようとする。それによって言い争いにならないだけでなく、各自の内面に良い変化が起きやすくなるといいます。

これらのルールがない場合、聞き手と異なる意見が出てきた瞬間に「お前は、ひどいやつだ!」「レイシスト!」のような言葉が飛び出すことも。レッテルが貼られた話し手はより高圧的になり、さらに悪い状況になってしまいます。

また、センシティブなテーマの場合は「意見を言うことでだれかを傷つけてしまうことはあり得ます。そのとき、謝れるかどうか、自分の非を認められるかどうかが大事です」と事前に話すようにしているとのこと。起こりうることを先に言語化しておく。それだけで、安心感がアップします。

ひとりの人間として参加する仕組み

Peace Education Lab NagasakiのプログラムやVOICEでの対話の場では、フラットな立場で話せる場の設計も大切にしています。基本的に先生と生徒という関係にせず、“いっしょに学びあう”というスタンス。テーマにもよりますが敢えて肩書きを言わず、ニックネームを使ってコミュニケーションをとるときもあります。たとえば「〇〇大学の〇〇教授です」と紹介されると、まわりは発言を躊躇する。でも、「ひでおちゃんです」と言った場合、多少話が長くなっても「このひでおって人、ちょっと自分の話好きだな」くらいの印象にしかならないといいます。他には、本筋とは関係ないテーマで自己紹介してもらうことも。参加者から「今日、チャリ盗まれました」みたいな話が出ると、その人がすごく高圧的だったとしても、この人チャリ盗まれてるしな、と気持ちがほぐれます。加えて、共通点や隙が見えると、人は安心して話せるようになります。ただ、テーマによっては先生という肩書きを使った方がうまくいく場合もあるので、臨機応変に決めていくことが必要です。

ぜひ、Peace Education Lab Nagasakiのノウハウを取り入れて、もっと豊かでPEACEな会議にしてみませんか。

Editor’s Postscript / 林田さんが高校生からずっと胸に持ち続けた想い

林田さんは高校3年生のときにアメリカの高校に招かれ、学生たちに被爆者の実態ついて話した経験があります。その際、冒頭で不信感を顕にしていた学生たちもいましたが、講義が終わると態度が一変。「自分たちは何も知らなかった」「ともに核兵器のない世界のために頑張ろう」と涙を流してくれた人、熱い握手をしてくれた人、ハグをしてくれた人…。1945年は敵だった国の学生とその戦争で使われた兵器について話して分かり合えた。その経験がずっと胸に残り、「立場の異なる人とのコミュニケーションのおもしろさを、多くの人に感じてほしい」という想いがベースとなり、2023年に「Peace Education Lab Nagasaki」を立ち上げています。

Advisor / 一般社団法人Peace Education Lab Nagasaki 代表理事 林田光弘

長崎・浦上に生まれ育つ。明治学院大学国大学部卒業、同大学院中退。2016年から2020年にかけて、被爆者の呼びかけがきっかけとなり世界で1370万人の署名を集めたヒバクシャ国際署名のキャンペーンリーダーを務める。 2021年から2023年度にかけて長崎大学核兵器廃絶研究センター特任研究員として、被爆者の実相を伝えるデジタルアーカイブと教材づくりに取り組む。2024年5月長崎の産官学の連携で平和と企業家を組み合わせた国際フォーラム「Peace-preneur Forum」のディレクションを担当。行政・NGO・企業が連携して開催した地球市民フェスの総合プロデユーサーを務める。12月には日本被団協のメンバーとしてノーベル平和賞の授賞式に参加。

山口 明希子

COPYWRITER

言葉を軸に、企業の広告やキャンペーン、新商品や新施設の立ち上げ、自治体の広報・コミュニケーションなど幅広い領域を経験。ネーミング、コンセプト開発、伴走支援などを通じて、クライアントとひと・まち・社会のよりよい関係を模索している。共生をテーマにした著書『みんなが心地いい社会って、なんだろう』を刊行予定。
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