Blog

#COLUMN

MY PERSPECTIVE 01 ビカクシダのワークショップと体験価値

COLUMN

316View
2024.12.5


はじめに
「鹿の角」を思わせる葉の造形が、自然が生み出した彫刻のようでたまらない存在感があるビカクシダ(コウモリラン)。世界中の熱帯地域に分布する着生シダ植物で、大きく分けて、東南アジア、オセアニア、南米、アフリカ・マダガスカルの4つの地域で18種の原種があります。そこから交配種が生み出され、素人には把握できない数の品種が愛好家の間で親しまれています。

環境にあった種類を選べば生命力も強く育成し易いこともあり、コロナ禍以降のインドアグリーンの注目、植物系のYouTuberやインフルエンサーの影響力も相まって、普及種はホームセンターでも取り扱われています。

今回は、AKOMEYA TOKYO in la kagūで開催された、植物と愉しむをテーマに、ビカクシダから多肉、サボテンや塊根植物の展示販売、体験型の企画まで用意されたイベント「縁日」の中で行われた、ビカクシダの板付けワークショップに参加してきました。
空間デザインや体験型のコンテンツにおける学びもあったのでレポートとしてお届けします。

1.ワークショップについて

ワークショップの講師は、植物と共に暮らす時間や空間プロデュースを行い、今回のイベントの主催者「IMAMA」の宮原隆作氏。自店のほか各地のインテリアショップやセレクトショップ、オンラインでも行っている企画で、メディアでも紹介されています。原生地では樹木に着生しているビカクシダを木板に固定し、壁に掛けたりディスプレイしたりできる形に仕上げる「板付け」体験です。

Step 1.好きな株とプレートを選ぶ

…今回はP.E.1通称白ビフという品種と、同行者はネザーランドを選択。どちらも初心者にも扱いやすい個体。成長点と葉っぱのハリからどの個体も健康そうでしたが、形や色は好みが分かれる部分です。成長した姿を想像して直感に任せてセレクトしました。プレートは空間デザインを手がける同社ならではのオリジナル。取り扱いもし易そうです。

Step 2.元の板から株を剥がす

…根が板に張り付いていて、生命力を実感します。

Step 3.プレートに結束バンドを通し、水苔を配置

…丸く山のように水苔を配し、もんじゃ焼きの土手のように中央にビカクシダを置く穴を開けます。

Step 4.ビカクシダをレイアウト

…木片を穴に入れ、その上にビカクシダを配置します。成長点が上を向くように据えて、新芽が上に生えてくるようにレイアウト。結束バンドで抑えて固定します。

Step 5.形を整えて、上部にフックを取り付けて完成

…周囲にテグスを巻いて水苔を固定。貯水葉の形に沿って綺麗な丸みを出すために水苔を足しながら形作ります。気に入った形になったら、最後に壁掛け用のフックを取り付けて完成です。
水やりなどの育成方法や設置環境についての話もあり、知識を深めながら安心して作品を持ち帰れる仕組みになっている点も好印象でした。

ワークショップを通じ、ビカク本体だけでなく木材やミズゴケといった自然素材を触りながら、形状やバランスを考えるプロセスそのものがデザインでワクワクしました。完成品は参加者それぞれのこだわりが詰まった可愛い我が子。今後どんな成長を遂げてくれるか期待しています。

また、壁掛けや棚のアクセントとして、空間そのものを植物と共にデザインするのは自宅に帰ってからのお楽しみ。

2.植物とクリエイティブ

植物のデザイン素材としての可能性

ビカクシダのような個性的な植物は、単なる「観葉植物」にとどまらず、空間やプロダクトのデザイン素材として非常に魅力的。特に板付けされたビカクシダは、壁面アートやインスタレーションの要素もあり、空間全体の雰囲気を変える力があり、自然とデザインが融合した新しい提案の可能性を感じました。さらに、サステナブルでエコフレンドリーなイメージも強いので、現代のライフスタイルにマッチしたデザイン素材にもなるでしょう。

3.今後の展望

今回改めて感じたのは、「育てるデザイン」の可能性です。ビカクシダは成長とともに姿を変えるため、空間に時間軸の変化をもたらします。このような要素を取り入れた空間デザインやプロダクトの提案は、より豊かな体験を提供できるはずです。

参加型体験の価値

また、ワークショップ形式での体験は、「完成品を購入する」のとは異なる満足感がありました。手と頭を使う「創る体験」を伴うサービスは、商品や空間への愛着や記憶を生み出します。これは、イベントやブランディングにおいて顧客体験を強化する方法としても有用だと実感しました。

おわりに

今回のワークショップは、植物好きな筆者にとっても「育てる」だけではない楽しみ方を再認識させてくれるものでした。自然素材を取り入れたプロダクトや空間は今後も注目されるトレンドですし、こうした体験から新たなアプローチを模索していく価値もあると思います。

BOTANIZEや叢などの植物店や、invisible inkのような鉢周りの園芸用品店など、特にコレクターやファッション界隈で人気ブランドが生まれて久しい植物界隈。それでもメジャートレンドにならないのは、季節性があることが一番だと思いますが、経歴が長い植物愛好家の視線が敷居になって入り辛いのかもしれない。しかし、ワークショップのように体験を通して愛着や記憶が生まれて、自然と輪が広まるのは波及の一つの良い方法だと感じました。

体験価値を実感した今回のワークショップ。何十年、ものによっては何百年と生き続ける植物は、育てている人が熱意を向けているかが一目で分かるくらい姿形に現れるので、筆者も価値以上のものに育て上げていきたいと思います。

秋山 悠

PROJECT MANAGER

ファッション誌のWeb編集者や、広告イベント企画会社のPM・プロデューサーを経験。デジタル施策のプロジェクトマネジメントを得意とし、化粧品、ファッション、食、金融、百貨店、宝飾など幅広いジャンルにも精通している。

  • HOME
  • Blog
  • MY PERSPECTIVE 01 ビカクシダのワークショップと体験価値

HPに掲載していない作品事例はこちら

Design Case Study

Download

News Letter

News
Letter