きっかけは、Dynamite Brothers Syndicateの石塚勢二が、街でこんなポスターを見かけたこと。

左は居酒屋、右はユニクロです。
元ネタは、おなじみ「かき氷の旗」ですが、そういえば、その旗は、いつ誰がデザインしたんだろうという疑問が。考えた昔の人も、まさか今、「アイス生ビール」というものにアレンジされるとは思ってもみなかったはず……。
そんなことを考えながら周囲を見回すと、ほかにもこの季節おなじみのアイテムのデザインが気になりはじめました。そこで8月某日、今デザイン業界で活躍中の3人に声をかけ、お酒を片手に、定番品のデザインの魅力を語っていただきました。

〈 集まった人 〉

〈 集まったお店 〉

ー この旗は、明治時代に衛生検査に合格した氷小売業者が、産地を表示するために掲げたのが始まりだそうです。
けんどう:へえー、そんなに昔からあったんですか!
ぴんぽん:氷の文字が相撲文字で、太くて力強くて、しかも色が赤じゃないですか。普通なら、何か熱いものを連想しそうですけど。
のりしお:逆に爽やかさとか、みずみずしさとか、シズル感を感じますよね。なんなら、いちごのシロップもイメージしちゃうくらい。
けんどう:それは考えすぎじゃない?(笑) この文字は「お祭り感」があるなって思います。かき氷を食べるのって、やっぱり非日常でちょっとしたお祭り感があるから、そのワクワクする感じが文字に表れているなって。
ぴんぽん:もしかしたら下の海が効いているのかもしれませんよ。もし海がなかったら、おそろしく平凡ですよね。
ー この波模様は、氷が海を越えて運ばれてきたことをイメージしているそうです。
けんどう:かなり荒波で水しぶきが立っていて、相撲文字も筆跡が荒々しいですよね。どっちもスプラッシュ感があるから、それが、さっき言っていたシズル感とかワクワク感の秘密かも。
のりしお:あと、色の組み合わせも絶妙です。白と赤と青ってコントラストがはっきりしていて国旗にもよく使われますけど、かき氷の旗も遠くからでもわかりますよね。
けんどう:ちなみにペプシコーラとかスーパーマンもその3色ですけど、アメリカの国旗の色が由来らしいですよ。
のりしお:へぇー!知らなかったです。

左:筆文字ではない場合。ややシズル感に欠ける。 右:青地の場合。白地に比べ、やや視認性に欠ける。
ぴんぽん:かき氷の旗は元々、アイキャッチとして優れたデザインだから、さっき石塚さんが見せてくれた「アイス生ビール」みたいに二次創作したくなるんでしょうね。
けんどう:なるほど。二次創作したくなる、しても成り立つのが、いいデザインの条件っていうのは面白い考え方。
のりしお:お祭り感で思い出しましたけど、縁日の屋台で売っているチョコバナナってあるじゃないですか。あれも二次創作っていうか、アレンジしたくなるデザインだって思います。
ー チョコバナナは昭和40年代に栃木県の和菓子メーカーが考案したそうです。
のりしお:中身はチョコとバナナでどの屋台も同じだから、デザイン性は外側のトッピングのアレンジに出ると思うんです。
ぴんぽん:チョコバナナっていうプロダクトのベースのデザインがしっかりしているから、いろんなアレンジができるんですね。

ー 渦巻き状の蚊取り線香は、明治28年に「金鳥」の初代社長夫人の発案で誕生しました。
のりしお:じつは今まで使ったことないんですけど……それでも、このグルグルしている物が蚊取り線香って知っているのは不思議ですよね。
けんどう:グッドデザイン・ロングライフデザイン賞に選ばれているぐらい歴史がありますからね。
ー 最初は約20cmの棒状で、仏壇の線香のように細かったから折れやすくて約40分くらいで燃えつきていたらしいですけど、それを渦巻にすると約75cmに伸びて燃焼時間も増えたそうです。
ぴんぽん:発明と言ってもいいですね。渦巻き状といえば、工業デザイナーの人に聞いたんですけど、固定電話とか機械のコードってグルグルとらせん状ですよね。カールコードっていうんですけど、あれは直線にするより伸縮性があってコードが絡みにくいらしいんです。そういう機能面でのリデザインが、蚊取り線香にもされていたんですね。
のりしお:機能的な意味もあると思いますけど、情緒的にも渦巻きがマッチしていると思います。蚊取り線香で蚊がやられるときのイラストって、必ず蚊が目を回しているじゃないですか。渦でそれを連想できませんか?
ぴんぽん:斬新な意見!!(笑)
けんどう:情緒でいうと、色もいいですよね。日本の伝統色を感じさせるせいか、「日本の夏が来た」って思います。CMの影響もあるでしょうけど。
ー 金鳥によると、茶色の線香を染料で緑色にしているそうです。茶色に対してムラなくきれいに染まる色、暑い夏に涼しさを感じる色、昔、虫よけに燃やしていた草の葉をイメージした色、ということで緑色なんだそう。
けんどう:あ、やっぱり情緒的な意味があったんだ!
ぴんぽん:最近、またお香がブームじゃないですか。インセンスも渦巻きにしたら、燃焼時間が長くなるってこと?
のりしお:燃えているのを眺めていると心が落ち着きそう。洗濯機が回っているのを見ているとリラックスするみたいに。
けんどう:ただ、インセンスはインテリアとしての一面もありますからね。渦巻きが合うかどうかは、その部屋によるかも。
ぴんぽん:燃焼時間とか強度を考えたら渦巻きですけど、インセンス自体の世界観によっては、渦巻きじゃなくて別の形でもアリですよね。ハートとか星とか。あ、ダサいか。(笑)
ー 風鈴の発祥は約2,000年前の中国。竹林に下げて、風の向きや音の鳴り方で吉凶を占う道具が起源とされています。
のりしお:意外とスピリチュアルだったんですね!
ぴんぽん:風鈴のすごいところは、目に見えない風を、音と短冊で見える化しているところですね。
けんどう:そういえば外国人の中には、風鈴の音を聞いても涼しさを感じない人もいるみたいですよ。
のりしお:そうなんですね! あの音で癒されるのは、世界共通だと思っていました。これ見てください。マグリットの「風の声」という作品なんですけど。
ぴんぽん:空に謎の球体が浮かんでいますね。
のりしお:そうなんです。鈴のようにも風鈴のようにも見えますよね。だから、外国人も風を音に置き換えたら、こういう硬質で金属的なイメージなんだと思っていました。
ぴんぽん:でも、きっと風鈴を普及させた昔の人は、音の印象で素材を選んでいただろうなって勝手に想像しています。ガラスとか金属だから涼しげな音色がしますけど、あれが木製だったらポコポコというだけで、まったく涼しそうじゃないですから。
のりしお:風鈴をデザインするってことは、音をデザインすることなんですね。
けんどう:昔から日本には、水琴窟とか、ししおどしとか、音をテーマにした物はありますよね。しかも、いまだに残っている。
ぴんぽん:さっきの蚊取り線香は香りで、この風鈴は音ですけど、感覚に直接訴えかけるものは時代が変わっても残るのかもしれないですね。
けんどう:たしかに。デザインというと、ついつい視覚的なアプローチばかり求めがちだけど、そこだけにこだわる必要はないし、五感をフルに使えるなら使ったほうがいいですよね。そういえば、先月イギリスでも風と音を使ったインスタレーションがありましたよ。風が吹いたら300本以上のギターが鳴るんです。
のりしお:300本!
けんどう:ギターは市民から寄付されたものなんですけど、なかには有名ミュージシャンもいて、あのオアシスも寄付したらしいですよ。
ぴんぽん:香りとか音で、ほかにうまくデザインされているものってありますかね?
のりしお:この季節、音でいうとラムネの瓶の音も好きです。
ー ラムネの瓶は、1872年にイギリスのハイラム・コッドが発明したそうです。炭酸飲料を密封する新しい方法として生み出したのが、ビー玉を栓にするガラス瓶でした。
のりしお:ビー玉が瓶にぶつかるあの音を聞くと「夏!」って感じがしません? 結果論だとは思いますけど、それも音による体験のデザインですよね。
ぴんぽん:わかります。さっきのかき氷とかチョコバナナとかラムネとか夏祭りのあるあるですけど、そういう目線で見たことないから、ちゃんと考えたら意外と気がつくことありますね。
けんどう:まあ、祭りのときくらい、そういうことは忘れて単純に楽しみたいけど。(笑)

後日3人にオススメの風鈴を教えてもらいました。左:のりしおオススメ「虹色風鈴」(sghr) 中央:ぴんぽんオススメ「UGO」(能作) 右:けんどうオススメ「Square Wind Bell」(Kouichi Okamoto)
話が尽きないまま終了のお時間となりました。今回は夏の定番品を取り上げましたが、ほかの物にもいろんな魅力がありそうです。「定番品のデザインを語る夜」、また次回お会いしましょう。
石塚 勢二
COPYWRITER
プロダクションにて企業の広告・プロモーションに携わった後、Dynamite Brothers Syndicateに参画。大局的な視点に立ち、企業のパーパス策定やブランドのコンセプト開発から、コミュニケーション戦略の立案、コンテンツの企画まで行う。