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コミュニティに愛称をつけるとブランディングが加速する。

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2022.12.12

コミュニティに愛称をつけるとブランディングが加速する。

いま、ブランド開発に必要なコミュニティ形成。 ブランド開発や、プロモーション施策において、誰に届けるかという視点はとても重要です。ターゲット属性、ペルソナ設定などが一般的に用いられますが、筆者はコミュニティ属性の設定こそが、現代のブランディングにおいて面白いと考えています。そこで筆者が取り入れているのは、デモグラフィック(人口統計学)だけでは測れない、コミュニティのインサイトを言語化して”愛称”をつけるという方法です。

マスニッチ時代のブランド開発に重要なコミュニティ形成。

D2Cブランドの成功に欠かせないのはコミュニティづくりと言われています。商品開発の前にコミュニティを先に作るD2Cブランドも出てきています。クラウドファウンディングのスキームもまさに、コミュニティありきのサービス開発と言えると思います。
「世界のマーケターは、いま何を考えているのか?」(クロスメディア・パブリッシング)の著者廣田周作氏も、「現在はブランドが人々から信頼を獲得する上で、広告活動だけでなく、安心できるコミュニティを運営しているかどうかが重要になっています。」と、現代のブランドに求められる要素としてコミュニティ運営の重要性を説いています。

なぜコミュニティが重要なのか?

SNS時代の消費者の購買行動の中で最も重要なのは、ブランドや企業の声ではなく、信頼できる人、憧れている人のコメントや、口コミです。
KDDIエボルバのレポートによると、良い口コミによる購入決定経験が一度でもある人は全体の98.4%。悪い口コミによる購入辞退経験も全体で98%存在するとされています。
口コミは、同じ価値観で情報共有しているコミュニティの間で拡がり始め、波紋のように大きくなっていき、コミュニティが大きくなっていった先に、新しいマーケットが形成されるのです。

 

濃度の高いコミュニティ形成に必要な、クリエイティブな視点。

新しいマーケットを作り出すためには、新しいコミュニティ形成が必要になるのですが、従来のようなデモグラフィック(人口統計学)から紐解いた戦略では新しいコミュニティは形成されません。
過去のデータからは、イノベーションは産まれないと言われているように、大事なのは新しいアイデアやサービスが産まれる、クリエイティブな視点をを取り入れることです。そこで、筆者がいつも行なっている方法が、コミュニティのインサイトを言語化し、愛称(ネーミング)をつけることです。

これまでも新しいトレンドが産まれると、そこにはいつも新しいコミュニティが産み出されてきました。メディアがそのコミュニティに愛称をつけることで、そのトレンドは加速し、大きくなります。

「ちょいワルオヤジ」と「港区女子」

例えば、少し古いのですが、男性向けファッション誌「LEON」が提唱した“ちょいワルオヤジ”。
世代によっては“ちょいワルオヤジ”と聞くだけで、そのコミュニティに属する人、またそのコミュニティに憧れるおじさんたちのイメージが膨らむのではないでしょうか。

LEON(主婦と生活者)
必要なのはお金じゃなくてセンスです。大人のためのクオリティ・ライフスタイル誌。 ブランドファッション、クルマ、機械式腕時計などを中心にトレンド・商品情報を満載。現在は“ちょいワルおやじ”という愛称は使われいませんが、7月号も創刊から変わらない世界観でおやじたちの願望をくすぐる編集してくれています。

 

他にも、一定の属性と、インサイトを上手く捉え、かつキャッチーなネーミングが、コミュニティ化を加速させ、コミュニティ濃度を高くする傾向にあると思っています。

特定のエリアをキーワードにした愛称
港区女子、東横キッズ

ライフスタイルをキーワードにした愛称
ノマドワーカー、Foodie、ミニマリスト

心理的要因をキーワードにした愛称
草食系男子、こじらせ女子、お一人様、メンヘラ

特定の趣味をキーワードにした愛称
カープ女子、サウナー、山ガール、スイーツ男子、ヨギー

特定のファンの人たちの愛称
eighter、アラシック、リトルモンスター、アーミー


港区女子とは、夜な夜な東京都港区の高級歓楽街に集まり、お金持ちの男性と高級レストランや有名クラブ、豪華なホームパーティなどへ足を運び、インスタグラムなどのSNSから発信している、意識の高いセレブのような女性たちのことを指すことが多いようです。(写真はイメージです)

愛称化することで、ストーリーが産まれる

例に挙げたように、コミュニティの属性が愛称化されることで、ライフスタイルやファッションなど、届けるべきコミュニティのイメージが膨らみ、サービスアイデアが浮かびやすくなりませんか?
消費者視点でも、愛称化されることで、より自分ごと化されるのではないかと思います。また、コミュニティが愛称化されることで、消費者はブランドと自分をつなぐストーリーを想像しやすくなります。コミュニティの愛称化は、いま注目されているナラティブストーリーの創造においても、重要な役割を担います。

コミュニティを愛称化する際のポイント

では、どのようにインサイトを上手く捉え、かつキャッチーな愛称をつけられるのか。必要なのは「インサイトを抽出するテクニック」と「共感を産むワードセンス」です。
筆者の場合は、ワークショップを行い、参加者のエピソードから共感度の強い因子を抽出し、インサイトを絞り込んでいきます。
その際に重要なのは、話をどんどん拡げていきながら、最後は収束させるファシリテーション力です。
ワードセンスは、言葉の拾い方や、組み合わせなど、まさにクリエイティブの経験値が重要になってきます。

真面目に考えても、共感は得られない

筆者はコミュニティの属性を愛称化することで、コミュニティ形成に取り組むとともに、新しいブランドやサービスのマーケティング戦略に活かしています。その際、あまり真面目に考えすぎずに、ノリを大事にしています。
マーケットに新しい価値観を生んだ“ちょいワルおやじ”も“草食男子”も“港区女子”もデータを目の前に並べて、眉間にシワを寄せ考えても出てくる言葉ではないと思うのです。みんなが各々のエピソードを話をし合い、多少の悪ふざけも入れながら、一番みんなが笑って、盛り上がった言葉を拾って愛称化することが、共感につながります。

その共感こそが、クリエイティブな視点を取り入れた新しいコミュニティ形成に大事な要素だと思っています。

試しにブランドを届けたいコミュニティに愛称をつけてみてください。
きっと新しい視点が産まれるはずです。

植村 徹

PRODUCER / PLANNER

クリエイティブエージェンシーでCI/VI、ブランディング、TVCM、Web施策などを経験。デザインシンキングや編集思考を用いたワークショップやファシリテーションを得意とし、百貨店の売り場開発、ライフスタイル商材のブランドコンセプト開発などを行っている。

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