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カフェメニューのサイズ表記で考えるUI・UX

813View
2023.3.20

Webサイトやアプリの開発で重要なUI・UX。じつはデジタルだけでなく、アナログにも存在することをご存じですか? 今回は日常のさまざまなモノやコトのUI・UXを考えます。

カフェのサイズ表記はまぎらわしい

とあるカフェでの出来事です。レジには行列ができていて、先頭からこんなやり取りが聞こえてきました。

客 「ロイヤルミルクティーのLをください」
店員 「一番大きいサイズですね?」

何気ない会話ですが、注文を待つ私はふと疑問に感じました。
「今の1ターン、ムダじゃないか?」と。

おそらく注文に間違いがないように確認したのだと思いますが、そもそも、S(エス)・M(エム)・L(エル)と、すべて「エ」から始まる2文字ではまぎらわしく、聞き間違いがあっても不思議ではありません。マスクで声がこもりやすい今はなおさらです。これがもし、Small(スモール)・Regular(レギュラー)・Large(ラージ)なら、まだ違いは明確になるはずです。

もっといえば、日本語で大・中・小にする方法もあります。それ以前に、注文自体を自販機にして、画面で写真やイラストを見ながら選べれば、間違いのリスクは大幅に減るに違いありません。
しかし、それが必ずしも最善とは言い切れないのがカフェという場所です。

人がカフェに求めるものはさまざま

人がカフェに求めるもの。まずはドリンクです。希望のサイズ、ちょうどいい温度のおいしいドリンクですが、それだけならコンビニで用は足ります。ゆったりとくつろげる時間や空間、気分転換できるおしゃれな雰囲気なども求めて、人はカフェに足を運びます。

そう考えると、先述の大・中・小というサイズ表記や、自販機での注文システムが決して最善ではないことがわかります。
おしゃれな雰囲気重視派にとって大・中・小はあまりに情緒がありません。「キャラメルマキアートの中」と「キャラメルマキアートのトール」では、後者のほうがおしゃれな雰囲気に浸れるはずです。また、店員との対話重視派にとって自販機はむしろストレスに感じてしまうでしょう。

スターバックスは、Short(ショート)・Tall(トール)Grande(グランデ)・Venti(ベンティ)というサイズで販売しています。
今でこそ馴染みのあるものになりましたが、日本第一号店がオープンした1996年当時は斬新でした。その言葉を口にすることで、新しさや非日常感に浸っていた人は多かったのではないでしょうか(私もその一人です)。たかがサイズ表記、されどサイズ表記といえます。

主要なカフェのメニューを比較すると、表記はさまざまです。あるカフェはS・M・L。別のカフェはSMALL・REGULAR・LARGE。R・Lだけというカフェも。また、同じSでもカフェごとに容量が異なるため、実際のカップを並べて容量を明記している店舗もあります。

それぞれ、ブランディングから店内のオペレーションまで考えての表記と思われますが、このメニューのサイズ表記とカフェでの体験は、そのままUI・UXに置き換えることができます。その前にUI・UXを簡単におさらいしておきましょう。

カフェのUI・UXとは?

UIとは
ユーザーインターフェイス。一般的にはWebやアプリなどでユーザーの目にふれる操作環境すべてを指します。画面上に限らず、マウスやキーボード、タッチ画面も含みます。

UXとは
ユーザーエクスペリエンス。ユーザーが商品やサービスから得られる印象や体験です。UIより広い概念で、使用や所有する過程での満足感や喜びなど精神面に重きが置かれます。

優れたUI・UXの条件とは、ユーザーが考えずに操作できるものだといわれています。説明書を見なくても直感的に操作できたり、欲しい情報にすばやくアクセスできたりといったことです。
これをカフェに置き換えると次のようになります。

カフェのUIとは
欲しい商品を探しやすく、注文しやすいメニュー

(ほかに、店舗の外装、看板、店舗名、スタッフの接客、決済システム、ドリンクやフード、インテリア、BGMなど多岐にわたります)

カフェのUXとは
心地よい時間を過ごせること

UIはUXを高める要素と説明されますが、同じようにメニューはカフェでの時間を心地よいものにするためのツールの一つです。つまり、UI・UXは決してWebやアプリだけに限らず、身近なモノにも存在するといえます。

身近なモノのUI・UX

case 01 「扉」のUI・UXを考える
UI:PULLとPUSHの表記(そのほかにガラス、ドアノブ、鍵など)
UX:建物に安全かつ快適に出入りできる体験
→ カフェの例と同じように「PULL」と「PUSH」が混同しやすく、優れたUIとはいえない。

case 02 「エレベーター」のUI・UXを考える
UI:開閉ボタン(そのほかにドア、階数表示、音声、照明、窓、鏡など)
UX:建物の上下を安全かつ快適に移動できる体験
→カフェの例と同じように「開」と「閉」が混同しやすく、優れたUIとはいえない。

case 03 「トイレ」のUI・UXを考える
UI:個室使用中の表示(そのほかに、男女表示、便器、個室の鍵、洗面台など)
UX:清潔かつ快適に用を足せる体験
→ 使用中(赤)空き(青)は多くの人にわかりやすいが、色の違いだけでは優れたUIとはいえない。

このようにUI・UX視点で周囲を見渡せば、既存の商品やサービスの改善点だけでなく、新商品や新サービスのヒントも見つかるかもしれません。
さらにUXをビジョンやパーパス、UIをミッションやバリューと置き換えれば、企業経営にも応用できそうです。

 

This is New Perspective
UI・UXはデジタルに限った話ではない。UI・UX視点で、商品やサービスの改善点、新規事業開発のヒントが見つかるかもしれない。

石塚 勢二

COPYWRITER

広告制作会社で多くの企業の広告、プロモーションに携わった後、入社。コピーライティングに限らず大局的な視点に立ち、ブランドのコンセプト開発からコミュニケーション戦略の立案、動画・音声コンテンツの企画・シナリオ設計まで行う。

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