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#BRANDING

ブランド・オーセンティシティは、ブランディングの新潮流になるか。

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2023.2.13

数年前から欧米で浸透が始まったブランド・オーセンティシティという概念が少しづつ日本でも注目を集めている。消費者が、企業やブランドに求めるオーセンティシティとは。

オーセンティシティとは?

オーセンティシティとは「信頼がおけること。信憑性。」の意である。すなわちブランド・オーセンティシティとは、消費者にとって信頼のおけるブランドということになります。そのために企業やブランドは、オーセンティック(本物・信頼できる)であることが求められています。

2022年の「カンヌライオンズ」や「NY ADC賞」などで広告賞を受賞している作品の傾向としても、
より良い世の中にしていくための企業姿勢や価値観をリアリティのある表現で発信している作品が多く選ばれていた。広告表現においてもオーセンティシティが重要視される傾向にある。
長年広告賞を取材している河尻亨一氏は下記のように語る。

オーセンティシティーやその形容詞である「オーセンティック」という言葉は、国際広告祭の審査会で頻繁に用いられている。「私の見るところ、発信者の本質・本音・本気が伝わってくるものが、オーセンティシティーのある広告として評価されている。
いわゆる受け狙いの表現や瞬発的なバズを狙った施策は、面白いものでも以前のように良いと思われない。むしろ避けられている」(日経クロストレンド)

オーセンティシティに重要な2つのこと。

また、Dyna-Search, Inc.の石塚しのぶ氏はこのように言っています。企業が「オーセンティック(本物)である」ことには二つの意味があります。ひとつめは「信じること(中身)と行動が一貫していること」そしてふたつめは「外へ向けて表現することが、ほんとうの姿(中身)とマッチしていること」です。

石塚氏が上げているこの2つの意味は、筆者がブランドディレクションをする際に、最も大事にしていることでもあります。

オーセンティシティが新しい価値観を生む。

ここで、オーセンティシティについて「ハーバード・ビジネス・レビュー」で興味深い考察があったので一部を抜粋して紹介します。

オーセンティックという表現がどのような意味で使われているのかを調べるために、2つの指標を打ち立てた。1つは、その組織がどれだけ特定のカテゴリーらしいか、もう1つは、その組織がどれだけみずからの理念に忠実であるか、それぞれに関連した質問を消費者に投げかけた。
バージニア州シャーロッツビルのイベント、「レストランウィーク」に参加した24のレストランで食事をしていた利用者に、この2つの観点で店舗での体験を評価してもらった後、また同じ店に来たいと思うか尋ねた。
特定のカテゴリー(「イタリアン」「バーベキュー」など)らしさからオーセンティックな店だと評価した利用者は、星の数を多くつける傾向があった。
ただし、値段が高くてもその店で食べたいとは必ずしも思っていなかった。一方、自らの理念に忠実であるという理由で店をオーセンティックだと評価した利用者には、食事代が余分にかかっても構わないと答える人が多かったが、興味深いことに、その評価は必ずしも星の数には反映されなかった。他カテゴリーでも同じような結果が得られた。そのうちの1つでは、音楽におけるオーセンティシティと評価を調べた。上記の結果と同じように、特定の音楽ジャンルにふさわしいバンドやミュージシャンには多めの星をつけ、みずからの信念や価値観を表現するバンドやミュージシャンのアルバムやコンサートは多少高くても買いたいと答えた。しかし、その逆はなかったという。

この結果から、カテゴリーらしさが社会的賞賛―この場合で言えば、ネット評価の星の数―につながりやすいという考え方ができる。一方、信念に忠実であると、消費者自身の価値観に共鳴し、より高い支払いに結びつく。
(DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー)

オーセンティシティへの共感は人であっても同様である。エンゼルスの大谷翔平がプロ入りする際に、打者としての評価と、投手としての評価、どちらの評価が高いのか評論家が様々なメディアで議論していたが、大谷翔平はそんな既成概念に捉われない二刀流の信念を貫き、ブレイクスルーした。
自分の信念がぶれることがないので、インタビューの受け答えにも迷いがなく、共感を生みます。日米のファンが応援しているのは、大谷翔平の投打における成績だけではなく、ブレない信念なのです。

潮流はインフルエンサーからUGCへ

企業やブランドがオーセンティシティーを重要視する傾向は、SNSマーケティングにも現れています。企業側からの依頼で制作されることが多いインフルエンサーに頼ったキャンペーンから、ユーザーが自発的にリアルな声を届けるUGC(User Generated Content/ユーザー生成コンテンツ)の活用へと転換し始めています。

イギリスでは極端に自分自身の写真を歪めたりレタッチするインフルエンサーとの契約を打ち切るという動きや、画像にレタッチが施されているかどうかをチェックする技術を取り入れ始めていると聞きます。

実際にインフルエンサーの起用をやめて、UGCを活用したプロモーションの方が高い成果が出るという事例も、海外では出始めています。消費者の声や本音が簡単に耳に入る時代において、企業の演出によって作られたコンテンツに、消費者は興味を示さなくなってきています。

イメージ作りで終わらないブランディング

「ブランディング」といえばロゴやスローガン、広告プロモーションなど、企業のイメージ醸成を中心に取り組むことが多かった。しかし、SNSの普及と共に情報の透明性が高まってくると、企業の取り組みや姿勢が消費者に見透かされるようになってきました。また、D2Cブランドの台頭は、企業と消費者の距離を近付けました。そう言った背景により、企業は「ブランディング」に対する考え方を大きく変える必要が出てきたのです。
外から見える「イメージ」をつくり上げることよりも、ブランドの中身そのもの(信念、誇り、価値観)として揺るがないものを築き、それを商品やサービス、クリエイティブなどを通じて表現していくことのほうが重要だと考えられるようになってきました。
ブランド・オーセンティシティそれは、単に本物とか、信憑性があるかということだけではなく、
自らの価値観や信念を信じ、本気で取り組み、本音で伝えることだ

植村 徹

PRODUCER / PLANNER

クリエイティブエージェンシーでCI/VI、ブランディング、TVCM、Web施策などを経験。デザインシンキングや編集思考を用いたワークショップやファシリテーションを得意とし、百貨店の売り場開発、ライフスタイル商材のブランドコンセプト開発などを行っている。

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