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人気の生ドーナツも、全米で大流行のスポーツも、話題の体験価値は「半歩先」

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2023.10.26

モノからコトへと顧客ニーズが変わっているのが昨今の潮流です。コトとは、つまり体験価値。そこで、今回はライフスタイルに浸透する新しい体験価値をつくる上で、筆者が大事にしている視点についてご紹介します。マジックワードは"半歩先"。

非日常の体験価値は3歩先、日常の体験価値は半歩先。

日常をなんとなく、退屈に過ごしたくない多くの人は、常に新しい体験価値を求めています。体験価値とは、ある商品やサービスの機能や性能だけではなく、感情的な体験や幸福感を言います。
筆者は体験価値を大きく2つに大別できると思っています。

一つは、非日常の驚きや感動を求める体験価値。
二つめは、日常に彩りを求める体験価値。

一つめの非日常を求める体験価値は、映画や旅行など、想像を超える体験が求められる従来からある価値観です。昨今の潮流となっているのが、二つめの日常を彩る体験価値です。例えばスイーツ、おいしいだけではなく見た目が可愛かったり、食感が新しいなど、おいしいものを食べる行為以上の、幸福感や自己実現を満たす新しい体験が求められます。そこで日常における新しい体験価値をつくる上で、筆者が大事にしている視点は、その体験価値が半歩先の距離感にあるかどうかです。

非日常の体験価値は、想像を超える3歩先
日常の体験価値は、想像しやすい半歩先

日常に浸透する新しい体験価値は、半歩先くらいがちょうどいい。

多くの人は日常生活において、大きな冒険を求めない傾向にあります。
とはいえ、何も変わらない毎日はとっても退屈に感じる。
日常における半歩先の新しい体験価値をつくるには、その商品やサービスを使ったときの幸福感を、ユーザーが想像できるかどうかが大事です。
例えば、少し前に流行ったスイーツを例にとってみます。
amam dacotan(アマムダコタン)の生ドーナツ。表参道のおしゃれなパン屋が作ったこのドーナツは、手に持つと崩れてしまうほど柔らかく、とろける食感のドーナツ。しかも販売当初は限定販売でした。スイーツ好きに限らず、瞬く間に話題となり1年経っても行列が途切れることがありませんでした。amam dacotan(アマムダコタン)の生ドーナツには、従来からあるドーナツを食べること以上の幸福感を得られる想像がつきます。
この一線を超えて一歩先にいるのが、例えば食用コオロギ。地球に優しい次世代の食材を食べる新しい体験価値はありますが、どんな食感で味なのか想像できません。また、地球のために積極的にコオロギ食を食べる文化が根付くにはもう少し時間がかかりそうです。このようにライフスタイルに浸透する新しい体験価値は、想像しやすい半歩先くらいがちょうどいいのです。

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画像はイメージです。

いま全米で人気沸騰中のスポーツ「ピックルボール」を知っていますか?

スポーツを楽しむことも日常生活を彩る体験価値のひとつですが、全米で話題のスポーツ「ピックルボール」も半歩先の新しい体験価値を上手く実現してます。ピックルボールとは、老若男女が楽しめる、テニスとバドミントンと卓球が混ざったような競技です。
まだ歴史は浅いですが、アメリカ国内での競技人口は500万人に迫る勢いで、この競技人口の増加率はスポーツ全競技の中で2年連続一位。いまアメリカで最も急成長しているスポーツ競技です。
ここまで「ピックルボール」が急速に広まった理由は、ずばり“ちょうどいから”。

  • ルールはテニスに近くわかりやすい。

  • コートはテニスより一回り小さく、バトミントンと同じコートの広さで運動量も適度。

  • ボールはプラスチック製で、ラケットは卓球よりひと回り大きく扱いやすい。

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誰にでも気軽に始められるこのスポーツは、アメリカを中心に瞬く間にライフスタイルに浸透しています。シリコンバレーでは、公園にあるテニスコートが次々と、ピックルボールコートに変わっており、ビルゲーツもこのスポーツの愛好家です。テニスのようにいまさらスクールに通う必要もなさそうだし、ルールも簡単で、外スポーツだから気持ち良さそうと、想像できたのではないでしょうか。まさに半歩先の新しい体験価値と言えます。

話題の量子コンピューターも近い将来には半歩先になる!?

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画像はイメージです。

話題の量子コンピューターは何歩も先に感じます。その性能は素人には想像を絶するものであり、Googleの発表では、スーパーコンピューターで1万年かかる計算問題が、量子コンピューターでは3分20秒で答えが出たものもあると言われています。この先、量子コンピューターは我々の知らないところでさらなる開発が進み、実用化に向けて突き進むのだと思います。そして、実用化され我々の日常生活に浸透する頃には、きっと半歩先くらいの体験価値に変換されていることでしょう。車の自動運転もひと昔前はSFの世界だった。環境問題による深刻な状況も、まだまだ先の未来だと思っていた。それが、ファッション×環境のように日常に浸透してくると、想像できる距離感になる、つまり半歩先に迫ってくると自分ごと化するようになります。

3歩先の非日常や、さらにその先にあるテクノロジーを開発するのは誰にでもできることではないけれど、半歩先の新しい体験価値は、既存のサービスや商品の組み合わせで見つけられる。その視点こそが日常に浸透する新しい体験価値をつくることに重要になります。

植村 徹

PRODUCER / PLANNER

クリエイティブエージェンシーでCI/VI、ブランディング、TVCM、Web施策などを経験。デザインシンキングや編集思考を用いたワークショップやファシリテーションを得意とし、百貨店の売り場開発、ライフスタイル商材のブランドコンセプト開発などを行っている。

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