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ソフトクリーム誕生秘話から学ぶイノベーティブな視点。渦巻きなのは可愛いからじゃない!

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2024.3.22

ソフトクリームーーーあのなめらかで濃厚な甘さが口に広がる子どもも大人も夢中になる魅惑のデザート。その上、とんがりコーンに渦巻き状に盛り付けられた唯一無二の見た目。その誕生の裏には5つのイノベーティブな視点がありました。

イノベーションは常に革新的なアイデアと創造性を求められる挑戦です。最近ではテクノロジー文脈で語られることが多いイノベーション。確かにAIをはじめとするテクノロジーはイノベーションを生み、私たちの暮らしに新たな価値を創造しています。しかし、現代のように世界中の情報が簡単に手に入らない時代は、生活の中の小さな思いつき、そしていくつかの偶然が重なり新しいイノベーションを生み出していました。筆者はイノベーションとは新しい体験価値・新しい行動様式を生み出すことだと捉え考察します。

 

1、新しい行動様式を生んだ技術革新

ソフトクリームの起源は諸説ありますが、1940年代頃、アメリカで「夏でもできたてのアイスクリームを提供したい」という小さな想いから、ソフトクリームは誕生しました。当時のアイスクリームはマイナス20℃以下で凍らせて運搬されていましたが、その過程で風味が損なわれることが問題でした。そこで、アイスクリームに空気を多く含ませる方法が考案され、家庭用の手回しアイスクリームフリーザーをヒントにした「オートマティック・ソフトサーブマシン」が生まれました。このマシンの発明によって、固めることなく口溶けなめらかで濃厚なできたてのアイスクリームを多くの人が楽しめるようになりました。それがソフトクリームでした。

 

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画像は日本に上陸した際のオートマティックソフトサーブマシン(NISSEI_HPより)

2、こだわりが生んだ新しい食感

美味しいソフトフクリーム開発には「温度」と「空気の含有量」がとても重要でした。ソフトクリームはフリーザーで-5℃~-7℃程度にフリージングされ、アイスクリームのように固めないでそのまま食べるものです。
ソフトクリームはフリーザーの中で冷却されながら、適当量の空気を抱き込み、なめらかで適度な冷たさを持たせます。その空気の混入度合いを示すものをオーバーランといいます。この空気の含有量はできあがりのソフトクリームの味覚に大きな影響を及ぼします。一般的にオーバーランが低すぎると、ソフトクリームは重くなり、風味がくどく、口溶けも悪く、組織も粗く硬いものとなります。また、逆にオーバーランが高すぎると気泡が大きくふかふかした食感で空気が多いため風味も弱く、冷たさも少ないものとなります。こうした試行錯誤によって、氷結晶が少なく口あたりがなめらかでフレッシュな、絶妙なバランスの新しい食感が誕生します。

 

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3、偶然×必然が生んだ唯一無二のデザイン

ソフトクリームの特徴的な見た目。「とんがりコーンに渦巻き」が生まれた背景には偶然と必然がありました。

その大きな転機となったのがアメリカのセントルイスで開催された万国博覧会でした。その博覧会ではアイスクリーム屋とワッフル屋が隣同士で出展していました。当時アイスクリームはお皿に乗せて販売していたのですが、その日はとても暑く、用意していたお皿がなくなってしまいました。そこで隣のワッフルを丸めてアイスクリームに乗せて提供したところ、大変好評だったそうです。しかも食べられるからゴミも出ない。ワッフルとの偶然の出会いがなければ今のソフトクリームはなかったかもしれません。

そしてもう一つ、ソフトクリームはなぜ渦巻きなのか。様々な色やトッピングで彩られ日々SNSに登場するソフトクリームですが、形はほぼ全て渦巻き型です。それは決して可愛いからではなく、渦巻き状にすることで空気を含みより口どけをなめらかにするため。また、固めないことが特徴のソフトクリームは、渦巻き状にすることで綺麗に盛り付けることができました。ソフトクリームが渦巻き状なのは美味しくソフトクリームを楽しむための必然だったのです。唯一無二のあの見た目は偶然と必然の融合によって生み出されました。

4、アイデアの連鎖を生む柔軟性

また、ソフトクリームは非常に柔軟で多様性があるため、新しいアイデアの連鎖を生みます。パフェになったり、フレーバーを取り入れやすいことでご当地ソフトができたり、様々なトッピングができたりと、愛らしい見た目は一層の写真映えを促します。その楽しみ方は無限大です。

 

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思わず撮りたくなるソフトクリーム

海外でソフトクリームと言っても伝わらないのでご注意ください
ちなみにソフトクリームは和製英語です。「ソフトクリーム」は、英語で “soft serve ice cream”(ソフトサーブアイスクリーム)と言います。日世の創業者である田中穰治氏が日本でソフトクリームを広めるために、出来るだけ短くわかりやすい表現にしようと「serve」と「ice」を省略し、「ソフトクリーム」と命名しました。

5、体験が思い出に変わる魅力

今や世界中で愛されるソフトクリームですが、その魅力は単なる味だけではありません。ソフトクリームが長く愛される理由は、常に新しい体験が生まれることや、それによって楽しい思い出が作られることです。子供の時に初めて食べたソフトクリーム、牧場で食べるソフトクリーム、友達と食べる話題のソフトクリーム、好きな人と食べるパフェ、ドロドロになりながら食べる子供を愛おしく感じる親。誰もがいくつものソフトクリームストーリーを持っているはずです。

ソフトクリームイノベーションまとめ

スマートフォンやAIのように社会に大きな変化をもたらすイノベーションはインパクトが大きいですが、我々の日常を少し豊かにしてくれるイノベーションから学ぶことも多いのではないでしょうか。

最後に、ソフトクリームの誕生秘話をひも解いたら見えてきたイノベーティブな5つの視点を整理します。

 

ソフトクリームの誕生秘話から学ぶイノベーティブな5つの視点

【新しい体験・行動様式を生んだイノベーション】
できたてのアイスクリームをその場で食べられる

ソフトクリームを広めたオートマティック・ソフトサーブマシンの発明
1 、多くの人が体験を享受できる技術革新はあるか

試行錯誤で生まれた口どけなめらかな新しい食感
2、消費者が新しいと感じるか

コーンに渦巻き、唯一無二のデザイン
3、革新的な見た目(デザイン)か

パフェやご当地ソフトなど、アイデアの連鎖で拡がるマーケット
4 、多様性と柔軟性はあるか

大人から子供までソフトクリームは思い出を彩る
5、消費者にそれぞれのストーリーが生まれるか

 

<参考文献>NISSEI_HP

植村 徹

PRODUCER / PLANNER

クリエイティブエージェンシーでCI/VI、ブランディング、TVCM、Web施策などを経験。デザインシンキングや編集思考を用いたワークショップやファシリテーションを得意とし、百貨店の売り場開発、ライフスタイル商材のブランドコンセプト開発などを行っている。

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