Dynamite Brothers Syndicateのメンバーの中で、イラストを得意とするデザイナーに話を聞くこの企画。今回スポットを当てるのは、デザイナーの蛭川ななみです。作品の描き方から、得意なジャンルやタッチ、影響を受けた作家まで、ちょっとマニアックなイラストトークをお楽しみください。
——:これまでにどんなイラストを描いてきたのでしょうか?
蛭川:今回は、学生時代の課題や自主制作として描いたものをご紹介します。
一枚絵の他、カットイラストを組み合わせたコラージュのような作品をよく制作していて、すべてiPad上でClip Studioなどの描画アプリを使用して作成しています。
卒業制作として都市をテーマに作成したスクエアのパッケージイラスト。各観光地を巡るイメージで描いています。
——:得意なジャンル、得意なイラストのタッチはありますか?
蛭川:柔らかい世界観や手書きの質感が好みなので、最後にクレヨンや鉛筆の筆跡のようなテクスチャを別でのせています。
学生時代は表現の幅を広げるために、水彩や厚塗り、アニメイラストまでさまざまなタッチを試していましたが、汎用性の高いものに落ち着きましたね。デッサンのような写実的なタッチから、Illusutratorで単純化した形をとってから色塗りを重ねたものまで、デフォルメの具合も媒体に合った落とし所を見極めて制作するようにしていました。
物語性を意識し、装画などの表紙絵をイメージして作成したもの。海原を線で表現する・鉛筆の描き跡を残して情報量を増やすなど、細かな部分で試行錯誤しました。
ポストカード・フレークシール用に制作。鮮やかな色味とデフォルメ感を意識しており、小さなモチーフを組み合わせて媒体が変わっても対応しやすいように構成しています。
——:好きなイラストレーターや影響を受けた作家はいますか?
蛭川:てらおかなつみさんですね。線の単純さと色彩の美しさが混ざり合っていて、柔らかではあるのに一目で世界観を理解できる印象の強さに影響を受けました。動物をモチーフにしている点もお気に入りで、愛犬との思い出が絵に重なって湧き出てくる優しい体験をさせてくれます。元々、絵本や雑貨のイラストを好んで真似していたので、自然と手描きの良さに惹かれるようになりました。
パッケージなどのデザインに組み込まれたイラストにも大きく影響を受けました。RURU MARYSのショコラサブレやキャラメルゴーストハウスのイラストに憧れて、デザインとして全体を見た時に効果的な表現の方法も学ぶようになりました。
——:イラストを描くスキルと、普段のデザインに共通点はありますか?
蛭川:イラストに長く触れていたこともあって、入社前はむしろデザインをイラストの一環として捉えつつ制作を行っていました。タイポなどグラフィックはもちろん、単純なエディトリアルでも視線誘導や効果的なカラーの置き方に対しては、今でも重ねて考えていることが多いですね。
また、形を正確に捉えていくという意味では、趣味で続けているクロッキーも基礎的な部分で役立っているのかなと感じます。正確な物の形を知れば、単純化したり分解したり構成の応用につながっていく感覚があります。
デザインはあらゆる視点からさまざまな表現方法でアプローチしていくことが大事とは思いますが、自分の世界観を持っているというのは、またそれも一つの武器になり得ると感じています。どちらも大切に伸ばしていって、新たな世界観を確立していければと思います。
蛭川ななみ
DESIGNER
在学中はイラストレーションを中心にクリエイティブを学ぶ。豊かな世界観や色彩、他と違った切り口でのアプローチが魅力。女性向けの柔らかなイラストを得意とする。