この仕事をしていると、年齢を重ねてもハッとさせられるような新しい視点に触れる機会が多々あります。昨年出会った「リアルキッチン&インテリア」の著者であるキッチンジャーナリスト、本間美紀さんもそうでした。本間さんとの出会いは、私にとって未知の世界だった“インテリアキッチン”の魅力を知り、新しい視点を得る、素晴らしいきっかけになりました。ここでは、私が「リアルキッチン&インテリア」を通して届けたい価値をご紹介します。
「リアルキッチン&インテリア」は、13年目を迎える人気のムック本です。本間さんが厳選した、憧れのオーダーキッチンや輸入キッチンが紹介されていて、料理好きや、上質な暮らしを楽しむ多くの方々に支持されています。この本は、創刊から12年間、著者の本間さんと、DBSの歴代ADの二人三脚でつくられてきました。そして13年目を迎えた昨年、積み重ねてきた想いを引き継ぎ、ADが井上にバトンタッチ。私も、この上質なコンテンツを、もっと多くの人に届けたいという思いで、プランナーとして参加することになりました。
本間さんの「リアルキッチン&インテリア」が提唱する“インテリアキッチン”は、インテリアからキッチンを考える新しい概念です。キッチンと家具、照明、マテリアル、さらには建築とのコーディネーション。間取りの考え方もより自由で個性的な空間を創造できることに気づかされました。
私自身、“インテリアキッチン”という概念に触れたことで、キッチンに対する価値観が大きく変わりました。
価値観が変わる時、そこには必ず新しい視点が生まれます。私は、そんな瞬間を「視点のイノベーション」が起きる瞬間だと考えています。
視点のイノベーションとは、
1、視点を変えること、もしくは変わること
2、価値観が変わること
3、視野が広がること
そうすることで、新しい価値や可能性に気づくことができるのです。「リアルキッチン&インテリア」は、従来のキッチンとは異なる、“インテリアキッチン”という新しい視点を与えてくれました。
キッチンは、家の中でもとても重要な場所です。しかし、一般的に多くの人は、工務店やハウスメーカーのおすすめの中からキッチンを選んでいるのではないでしょうか。
高級車だったら、ポルシェ、ベンツ、BMW…、すぐにいくつかのブランドが思い浮かびますよね。ファッションやコスメのハイブランドでも同じです。では、キッチンはどうでしょう? オーダーキッチンメーカーや輸入キッチンブランドを、すぐに思い浮かべられる人は、そう多くはないのではないでしょうか。
従来のキッチンの視点:
一般的にキッチンは、工務店やハウスメーカーからの紹介が多く、最大公約数的な利便性を追求した空間。
インテリアキッチンの視点:
キッチンはインテリアの一部であり、QOL(クオリティオブライフ)の中心となる、創造性を刺激する空間。憧れのライフスタイルを表現する重要なスペースだからこそ、自分のセンスで妥協なく選んでつくるもの。
高級車やハイブランドを選ぶように、キッチンを選んでつくる。「リアルキッチン&インテリア」は、そんな当たり前のことに気づかせてくれます。
「リアルキッチン&インテリア」との出会いで、私のデザインに対する視野も大きく広がりました。インテリア視点で視野を広げることで、インテリアデザインはもちろん、マテリアルデザイン、空間デザイン、建築デザイン、ライフスタイルデザイン、サステナブルデザイン、世界のデザイン文化…。さらには、最新のIT機器や家電の情報まで、自然とその解像度は上がっていきます。
まるで、点と点が線でつながるように、今までバラバラだった興味が一つにつながっていく感覚。どのデザインジャンルも突き詰めれば奥が深いので、なかなか一歩を踏み出せない方もいるかもしれません。そんな方には、インテリアキッチンを起点に、視野を広げてみることをおすすめします。
インテリアキッチンはQOLを上げる住まいの心臓部と言えます。海外では引越しの際にキッチンを一緒に持って行く文化があるといいます。最近では、オーダーキッチンが家の資産価値を上げるケースも増えているそうです。創刊当初に比べて事例紹介の取材対象者に男性がずいぶん増えたと本間さんは言います。 キッチンへの感度が上がれば住まいが変わります。住まいが変わればライフスタイルが変わります。コミュニケーションが変わります。そして、もしかしたら…キッチンが変われば日本全体が変わっていくかもしれません。「リアルキッチン&インテリア」で描かれている価値観がもっと多くの人に広がれば、きっと日々の暮らしはもっと満たされるはず。そう感じています。
リアルキッチン公式HP https://realkitchen-interior.com/topics/41399
小学館オンラインサイト https://www.shogakukan.co.jp/books/09802201
植村 徹
PRODUCER / PLANNER
クリエイティブエージェンシーでCI/VI、ブランディング、TVCM、Web施策などを経験。デザインシンキングや編集思考を用いたワークショップやファシリテーションを得意とし、百貨店の売り場開発、ライフスタイル商材のブランドコンセプト開発などを行っている。